『レディ・ウェポン ZERO』というすごすぎる映画を観たっ!


レディ・ウェポン ZERO』鑑賞。

マギー・Q主演の『レディ・ウェポン』にあやかって邦題を付けられたのだろう。原題は『赤裸狂奔/Women On The Run』といってまったくの別物で93年に制作されたのだが、またまた香港映画のアナーキーさというか、強烈な一面を観たという感じで驚いてしまった。こういう作品がVシネとかではなく、当たり前に劇場用映画として作られるところに香港映画の懐の深さを感じてしまう。

レディ・ウェポンZERO』はとある女が逮捕されて留置所に運ばれるところから始まる。彼女が少女時代を回想するのだ。

まず、冒頭がすごい。いきなりセリフで「男は信用してなかった」というのだが、これが最後の最後まで伏線になっている。

主人公は娯楽が何もないクソ田舎で育った女の子。ブルース・リージェット・リーに憧れ、子供の頃からカンフーの修行に励み、武術大会で優勝するほどの実力を持つのだが、冒頭で「男は信用してない」と言ったくせに、いきなり都会の男と一緒に広州に行く。

広州で容姿を磨けと言われるのだが、何故か娼婦になっており、いきなりラス・メイヤーの如く、ベットの下をカメラが通り抜け、主人公がバックから犯されてるところが映し出された後、相手をしていた男に罵られたことに腹を立てた主人公は、なんと、

素っ裸で相手の男を叩きのめす!!

おっぱいとかも振り乱して蹴りとばす!

相手の男は怒り心頭で売春宿を後にし、彼氏に「なにやってんだ!」とビンタされる主人公。

主人公は当たり前のことを男に言う

「私のこと愛してるって言ったじゃない!ホントは金づるだと思ってるんでしょ!?いつまでこんなことさせるのよ!」

そりゃそーだ。

その男の言い分もすごい。

「オレが他の男に抱かれるのを望んでると思ってるのか!?!?」

じゃあなんでそんなこと主人公にさせるんだよ!!

主人公は泣きながら懇願する「私が今まで稼いだお金を返してよ!」

そしたら彼氏は手のひらを返し、優しく主人公を抱きながら「金が貯まったら香港に行こう、お前には何でもしてやったじゃないか」と言って、白い小包を渡す。

抱かれた体をキレイにしようと、主人公はシャワーを浴び始めるのだが、そこで何故かシャワールームの窓が開く。窓の外には他の女といちゃつく彼氏の姿が!!

そんなに早く降りて、すぐに女といちゃついたのか?結構距離あるぞ!?!?

当然、それを見て、裏切られたと怒りに打ち震える主人公。主人公はおもむろに白い小包を掴むと、次のカットで拳を握りながら注射器を腕にぶち込んでるのが映し出される……

ヤクだったのか!?つーか、売春させられて、ヤク漬けにされるって、お前、「男を信用しない」って言ったくせに完全にだまされてるよ!!!

ヤクをぶち込んだ後のカットがまたすごい。いきなり、下着姿にレインコートを羽織って、チャリを漕いでいる。しかもコマ落としでだ!ものすごいスピードでその男のところまで突っ走ったら、すぐにその男を引きずり回し、後ろ回し蹴りをバコーンとぶちかます!そしたらそれがたまたま鉄筋かなんかに突き刺さって、男は死んでしまうのであった。

夢をつかむために広州に行ったのに、いきなり犯罪者になってしまう主人公なのだが、何故か金が無くて香港に行けなかったのに、逮捕されてからは次のカットで香港で売春をしている……裁判とか、刑に服したのは映さないのな!!

そしたら、今度はそこに警察の捜査が!!

必死で逃げる主人公。走って、走って、建設途中のビルによじ登る。

「それ以上近づくと飛び降りるよ!」と宣言して、警察とこう着状態が続くわけだが、ビルに登ったのは夜、そこから明るくなって、また夜になって、明るくなる……2日も飲まず喰わずで建設中の足場に居たのか!?!?

フラフラになってるところを、女の刑事が同じ自殺者のフリをして近づく、命綱を隠して、足を滑らせたフリをして主人公にその命綱をつなぐ女刑事!!足場のないところで大格闘を繰り広げたら、『プロジェクトA2』のように竹で出来た足場に落ちていく二人。網に引っかかって、主人公は御用となる。

場面が変わって、今度は警察のトイレ。主人公を止めようとした女刑事が、ひざのケガを見ている。後ろから男の刑事登場。いきなり、後ろからその女刑事を抱く。どうも、この二人はデキているようだ。

その後、事件の会議で、女の刑事に忠告する上司

「おい、彼は結婚してるんだぞ」

刑事が不倫してるのかよ!!

ところかわって留置所。主人公の元彼はどうやら麻薬の密売人だったようだ。逮捕するのに、主人公を利用しようと、不倫刑事たちは、女二人で売人に近づく計画を立てる。主人公は最初は断るも、香港から出て行ってもらうぞという言葉に脅され、同意せざるを得なかった。

車で行く途中にヤクが切れた主人公は「協力するけどお願い…ヤクをちょーだい」と言い出すのだが、なんとその女刑事はおもむろにヤクを差し出す!!!!そんなことしていいのか!?!?

主人公は行き先が気になったので、何処へ行くの?と訪ねるのだが、行き先が広州だと分かると、今度は走ってる車から脱出を試みる!!手錠が車のシートに繋がってるのだが、なんと無理矢理シートを外して、イスごと飛び降りるのだ!!

イスを持ったまま、追いかけっこを繰り広げる二人だったが、海辺まで走って、息が持たなくなる主人公。

その場に倒れこむが、何故か今度は食べ物が欲しいと言いだすしまつ。「お願い私を助けて…」と主人公はフラフラの状態で女刑事に言うのだが、女刑事はなんと、「助けてあげるわ」と、主人公を海に投げ飛ばす!!!何故だ!?

――――と、冒頭からトンでもない演出が続くのだが、中盤からド級のドンデン返しとまったく想像のつかない展開を映画は見せ始め、予想もつかないラストへと加速していく。

全部書くと長くなるし、観ようと思ってる人には楽しみが半減するので書かないが、予告編として、チラッと書くと、まず、主人公が酔拳のソカシのようにヤクが切れると戦えなくなり、ヤクをぶち込むと無茶苦茶強くなる。さらにダマされてカナダで逮捕される主人公たちだが、なんとそこから泳いで香港まで戻る*1。そして、そこから最大のクライマックス、主人公二人が素っ裸になりながら、レイプしようとする外人たちと大立ち回り!!*2

他にもまだまだあるんだが、演出がとにかくぶっ飛んでいて、マジで一見の価値ありだと思う。

さて、ここまで書いておきながら、この『レディ・ウェポンZERO』――――ハッキリ言って傑作だ。

まず、主人公二人がとにかくすごい。カンフーシーンはしっかり演じているし、投げ飛ばされたり、壁にぶつけられたりと、信じられないスタントをちゃんとこなしている。さらにおっぱいを振り乱して、全裸で戦うなどの強烈なシーンから、生々しいレイプシーンやセックスシーンなど、体を張りまくる。ハッキリ前バリがあるのも確認出来るが、お尻丸出しでハイキックなどもしていて、これは『イースタン・プロミス』よりも15年早い。

さらに映像が美しい。特にアジアンテイストの部屋の中で煙が立ちこめるところに窓から光が差し込みまくり、そこで繰り広げられる格闘シーンは『ブレードランナー』のクライマックスを彷彿とさせる。アンドリュー・ラウの影響を受けまくってるようなストップモーションもアクションシーンでうまく使われていて、この手の映画にはないスタイリッシュさがある。

なんと、これを監督したのは後に香港版『チャーリーズ・エンジェル』とも言える『クローサー』を作り、さらにハリウッドでお色気カンフー映画の『D.O.A./デッド・オア・アライブ』を撮る事になるコリー・ユン。返還前ということもあってか、血はぶしゅぶしゅ飛び出すわ、それこそ無修正で女が全裸で戦うわ、ホントにやりたい放題。コリー・ユンはこれを撮ったから、『D.O.A.』*3にたどり着けたのだなぁと思うと、非常に感慨深い。

てなわけで、ビデオ屋に行った時は是非マギー・Qの『レディ・ウェポン』じゃなく、この『レディ・ウェポンZERO』を借りてみよう!明らかに低予算だし、有名スターは出てないが、とてつもないパワーに満ちていておすすめだ!あういぇ。

クローサー [DVD]

クローサー [DVD]

DOA デッド・オア・アライブ [DVD]

DOA デッド・オア・アライブ [DVD]

レディ・ウェポン [DVD]

レディ・ウェポン [DVD]

レディ・ウェポン ZERO [DVD]

レディ・ウェポン ZERO [DVD]

ちなみに『レディ・ウェポン』もその後すぐに借りてみたのだけれど、マギー・Qのインタビューがすごくて、セックスシーンについてなんだけど、

「セックスするときに服着てるなんておかしいでしょ?だから脱いだわ、それに相手が元彼だったからやりやすかったわよ」

普通こんな事いうか!?偉い!!偉いぞ!マギー・Q!!!

*1:ただ、ここでは説明が一切ないため、もしかしたら、ぼくが勘違いしてる可能性も否めない。誰か情報を求む

*2:つーか、片方はレイプされてる

*3:『D.O.A.』も負けず劣らずの凄まじい娯楽大作である