『ゾディアック』をBDで鑑賞。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2008/07/09
- メディア: Blu-ray
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すごい高画質だというのを聞いてて、構えて観たんだけど、これが噂に違わぬ素晴らしさで、正直、夜のシーンになると若干のチラツキが気になるものの、CGを駆使したエスタブリッシングショットの数々は、えも言われぬ美しさだった。
映画自体も傑作なんだけど、あの映像の美しさだったら、全カット観てるだけで満足する。だって、メガネに背景が映り込んでて、それがハッキリ何を映してるか分かるくらいだし、オフィスのシーンに至っては、奥の奥まで居る人の顔ハッキリ分かっちゃうんだもんね。もうドルビーの英語音声しかないなんて文句も消し飛んだよ。
あと『ゾディアック』の制作秘話を語るドキュメンタリーがあったんだけど、これがすごかった。
『ゾディアック』っていうのは徹底的にあの事件を再現することを目的とした映画だったのだ。
元々完全主義者と呼ばれているデヴィッド・フィンチャーだが、今回ばかりはスタッフ共々異常とも言えるこだわりを見せた。
当時の関係者に話を聞きまくるのはもちろんのこと、事件に遭遇して生き残った人にその時の恐怖を「やぁ、どうも、んで、あんときどんな感じで殺されかけたのよ?」って感じでズバズバ聞き出したり、殺人事件があった場所で撮ることはもちろん、風景が変わっていれば、草や木を植えなおしてその時の風景に近づける徹底ぶり。通りや交差点など、撮影が難しいとされる場所はセットで組んで、背景をフルCGで書いた。ゾディアック事件の死体写真もドキュメンタリーで出て来るのだけれど、その写真が映画に出て来る構図と丸々一緒で、死んだ時の構図も完コピなのか!といちいち驚く。
着ていた衣装はもちろんのこと、乗ってた車、被害者が通ったであろう場所も完全に再現。ここはどうなんだろう?というところはスタッフと監督で徹底的に話し合い、刑事も顔負けの答えを出してから撮影に望んだ。容疑者のリー・アレンを演じたジョン・キャロル・リンチ(『ファーゴ』のノーム)もリーが喋ってたテープを渡してもらって、仕草から喋り方まで完璧にコピーして撮影にのぞんだ。もはやゾディアックに取り憑かれてるのはあんた達じゃないか!と言いたくなるくらいである。
故に、『ゾディアック』でリー・アレンが犯人だという風に示唆して終わるのは、トースキーとグレイスミスがそうだと当時思ったから、その通りに描いているということなのだ。
また音声解説もすごい。なんと、アメリカ文学の狂犬ジェイムズ・エルロイがただ単に『ゾディアック』の大ファンというだけで登場。しかものっけから「ジェイムズ・エルロイ犯罪小説家だ、『ゾディアック』は素晴らしい犯罪映画だ。」と言うくらいの絶賛っぷり。彼の出世作『ブラック・ダリア』だって、当時のブラック・ダリア事件を徹底的に調べて書いたものだ。何かしらのシンパシーを感じたんだろう。
そのエルロイがかなり饒舌。どうもゾディアック事件のことは知らなかったらしく、この映画で全容が分かったと言ったあとは、ひたすらに褒めまくる。「うーん、この実在の刑事を演じた彼はいいね」「殺人現場の映像は脚色されすぎてなくて素晴らしい!」「映画でCGが多用されるのは嫌いだが、デヴィッドは物語進行のために使っている」「この映画が他の犯罪映画と異なるのは引っかけがないところ。あるのはディテールの積み重ねだけだ。すべてが理論的で、一貫性があり、だから観客は引き込まれるんだ」などなど。
というか、改めて観て、とてつもない傑作だなと思ったし、以前ぼくも「マジに傑作。『セブン』や『ファイト・クラブ』は越えてないが、それに並ぶ。何度も何度も観れる作品だ!」と書いていた。でも何故かその年のベストに入れてなくて、その代わりに入ってるのが『バイオハザード3』とか『トランスフォーマー』というボンクラ映画……
まぁ、それはそうと、このBD版。今ならAmazonで2175円で買えてしまうのだ!DVDよりも特典が満載で、さらに画質も良くて、値段も安いと言うことなしである。おすぎのおばさんならば「お買い得です!買わないなんてバカ!」と声を裏返しながら言うこと必至なので、お持ちでない方は是非どーぞ。あういぇ。