これぞ暗黒!『ブラック・ダリア』
ジェイムズ・エルロイの『ブラック・ダリア』を読んだ。前に読んでたのだけれど、キャラクターがわんさか出て来る上に、名前が覚えられず、半分くらい斜め読みしていたことを告白しておこう。

- 作者: ジェイムズエルロイ,James Ellroy,吉野美恵子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/03
- メディア: 文庫
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『ブラック・ダリア』は実際に起きた猟奇的な殺人事件“ブラック・ダリア事件”を元に作られた作品なのだが、実に多面体な魅力を持っている。ただ、その面が、すべて暗黒!良心は一切なし!いかがわしさ全開!なのだ。血も噴き出しまくるのだけれど、鮮血というよりは、どす黒い血に塗れてるような小説であった。
正義であるはずの警察、華やかな場所であるハリウッド、健全なスポーツのボクシング――――「そんなもん全部まやかしだ!まやかし!」と言わんばかりに、エルロイはその内部を描いていく。しかも、良心となる部分はほんの薄皮程度で、少しだけペロっとめくれば、あとはダークサイドがゴボゴボと溢れ出して来るような強烈な文体。全体的に出て来るモチーフは暴力、金、セックス、SM、殺人、ポルノだ。しかも、その良心すらも、犯罪でもって包み込んでいる。正義ということばは出て来ず、主人公も法を犯しまくって事件解決に向かうので、事件を解決することが、自分にとって身の破滅を招くようなことになるというところも実に気に入った。金のためでもなく、友情のためでもなく、彼を突き動かしてるのは女。それも愛情というよりは性欲によって動いてるような節がある気がする。しかも、自分が相手する女に殺されたダリアを重ね合わせるという始末。こうやって書いてるだけでも実に危険な匂いのする小説だ。
“ブラック・ダリア事件”の他にも様々なエピソードがあり、それらも飽きさせないのだが、その様々なエピソードも伏線となっていて、ラストに集約されていく構成も大変素晴らしい。しかもドンデン返しに次ぐ、ドンデン返しで、最後の最後までどういう話になるのか分からないところもヒットに繋がったのではないだろうか。交通整理がきちんとなされてるとは思えないところもあるが、そのパワーたるや読んでるそばから血が沸騰するような感覚がある。パワーだけでなく、繊細な部分もあり、細部にわたって綿密に描写されていく、特に主人公がメキシコに行ってからは出て来る風景が完璧で、暴力描写や死体の描写などもノっている気がした。
というわけで、さすが暗黒小説の巨匠エルロイと唸ったわけだが、あくまで『ブラック・ダリア』は序章らしく、ここから、どんどんダークサイドが酷くなっていくらしい。さらに『ホワイト・ジャズ』は、その狂い方がハンパじゃないようで、文体からすさまじいらしい。順番に読んだ方がいいらしいのだが、本屋に『LAコンフィデンシャル』と『ビッグ・ノーウェア』がなかったので、『ホワイト・ジャズ』を次は読もうと思う、あういぇ。
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- 作者: ジェイムズエルロイ,James Ellroy,佐々田雅子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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