慎吾ちゃんの『座頭市』が公開してますが……


今日は休みだったので、何気なく勝新の『座頭市』シリーズを観てたんだけど、これがホントに良く出来てて、驚いてしまった。ぶっちゃけ、ちょっとナメてました。座頭市。というか、平成版と最初の『座頭市物語』は観てたんだけど、まぁ、おもしろいよねぇくらいで、シリーズもんって最初のヤツが一番おもろいっていう感覚があったもんだから、まさか他のがここまでおもしろいとは思いませんでした。むしろ最初のヤツよりもおもしろいです。すいません、本当にすいません。まぁ、勝新座頭市はまたまとめて記事にするということで。

んで、夜に北野武の『座頭市』をDVDで鑑賞。『座頭市 THE LAST』とか公開してるのにすいません。『アウトレイジ』の記事を書いたら、「北野武 座頭市」で日記内を検索する人が結構いたみたいなので、改めて感想を書くことにしたのであった。

銀残しを使って色を落としたざらついた映像に、ブルース・リー的な一撃必殺の殺陣、日本舞踊、コントとミュージカルなど、時代劇という括りからは完全にはみ出しているが、あの『座頭市』をぶち壊すという意味では全てが上手く行ったと思われる痛快時代劇。

CGを使い、血や切った指が飛び散るリアルな殺陣がとにかく素晴らしい。本気で斬りつけているかのような動きと速さ、さらに音で重みを表現。テンポよくリズミカルに編集することで、映画ならではの視覚的演出にも長けている。この辺はさすが編集が大好きな北野監督と言ったところ。


ぼくが北野武の『座頭市』で好きなところは音楽だ。


ぼくは鈴木慶一のファンということもあって、この音楽は彼だからこそバッチリハマってるんじゃないかなぁと思っている。鈴木慶一は言わずと知れたムーンライダースのボーカルだか、その音楽的センスはバンドだけに収まらず、糸井重里氏が手がけたゲームの『MOTHER』でも才能を発揮している。ロックやポップス、サルサ、まで飛び出す音楽性に驚き、メロディがしっかりしてるのにも感動した。鈴木慶一はさらに『リアルサウンド』というゲームの音楽も担当。映画は岩井俊二監督の『毛ぼうし』という短編でもニットキャップマンという曲で参加した。

ぼくは北野監督の『座頭市』に久石譲がいったいどういう音楽をつけてくるのか興味があったので、鈴木慶一が担当すると知り、とても楽しみだったが、これが素晴らしい。

畑を耕す音や雨の音などの効果音を拡張し、ループさせ、ミニマルな旋律を繰り返すメロと和もののリズムに組み合わせるという荒技は、『AKIRA』で芸能山城組民族音楽を取り入れたのと似ている気もするが、完全に時代劇の枠を越えている。もちろん下駄のタップダンスの音楽もすごい。タップの音に「ハッ!」というかけ声をミックス、それに太鼓の音を細かく入れるというのはこの人にしか出来ないだろう。

金髪という設定や音楽からして、まったく別なモノだよと思わせたかったのだろうが、実は北野武の『座頭市』は勝新太郎の『座頭市』に忠実なリメイクでもある。敵の持ってる竹槍を真っ二つにするなど、そのまんまシーンを再現したのもあったり、コメディリリーフとしてガダルカナル・タカを使ったのも藤山寛美を彷彿とさせる。ジャンル映画の再構築と思われたが、北野武勝新に最大限の敬意を払い。この作品を作り上げたのだ。

個人的にタップのシーンが強烈だったりして、逆に橘大五郎関連のシーンは丸々落としてもよかった気がする。それだけでなく二人の旅芸者うんぬんのエピソードは蛇足でしかない。やはり観たいのはたけし扮する座頭市が相棒のタカと暴れ回るところであり、焦点がぶれるほどの振り幅は必要ない。『座頭市』という冠ならば、浅野忠信演じる浪人侍と座頭市が心通わせるシーンなんかも観たかったが*1北野武は時代劇はおろか、万人ウケするような娯楽作も撮った事がなかったので、これが精一杯だったのかもしれないなぁ。

というわけで、たけしが座頭市!?と懐疑的になる人もいるかもしれないが、これはこれで一番違和感がない形になってると思う。本人も勝新太郎は超えられないって言ってるから許してやってください。金髪に下駄タップなんだしさ、あういぇ。

ちなみに蓮實重彦御大はたけしの座頭市を宇宙人として論じています。さすがっすね!

http://www.mube.jp/pages/co_01.html

座頭市 <北野武監督作品> [DVD]

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*1:しかも死ぬはずだった侍が死に場所を求めるというのはたけしが今までに演じて来たキャラに近い