立ち切れない暴力スパイラルの中で『エレクション2』

『エレクション2』鑑賞。正式な日本のタイトルは『エレクション 死の報復』

東京では最近『タマフル必修映画セレクション』として1と2が劇場で観れる状態だったらしい。『キック・アス』も観れたりと非常にうらやましい環境なわけだが、それはそうと先日御用達のビデオレンタル店に行ったところ、普通に『エレクション2』がレンタルであったので速攻借りて来た。なんとぼくはまだレンタルは出てないだろうと勝手に思い込み、置いてある『エレクション 死の報復』をずっと1の方だと思いこんでいたのだった。あれ?1の方はもう旧作のコーナーのところにぶちこまれたのかな?せめて一緒に置いておいてほしいところではある。

『エレクション2』は前作の選挙から二年後のお話。

前回、衝撃のラストでもって、無事に会長に就任したロクが再選を狙うも、ディーの右腕的存在であったジミーがビジネスの才能を発揮。ジミーも当然のごとく候補にあがるが、ジミーは会長職にはちっとも興味がなく、ロクは虎視眈々と再選を狙う。ところがジミーは「お前が会長にならないならビジネスを出来ないようにしてやる」と警察から理不尽に脅され、大人の事情でもって仕方なしに会長に立候補。焦ったロクは口約束で「オレを今回会長にしたら、次はお前を会長にしてやる」とジミーの兄弟分たちを側近に付け、やはりここでも血みどろの戦いを繰り広げるのであった……

選挙戦とマクガフィンの奪い合いという前作が鮮烈すぎたためか、それと比べると若干劣るというのが正直な感想だが、それでも傑作。いわゆる『キル・ビル』二部作の後半戦という感じ。

この人の映画は毎回予測が付かないが、今回もそれは同様で、二部作の後半だからとて、この物語に決着をつけてやるぜ!みたいなドヤ顔が一切なく、全体的に映画は良い意味で不安定である。二年しか会長が出来ないという掟があるにもかかわらず、掟なんてくそくらえだ!と暴走するロクは前作におけるディーと同じであるという皮肉な展開だが、前作のラストが効いてるため、こいつは何しでかすか分からない感があり、それが物語の良いスパイスになっている。筋立てがカチッとしてないぶんあいかわらず「すわ!」な展開に発展していくのだが、これが黒社会に生きる男たちの日常を模しているようでリアル。決着のつかない物語の中、男たちは掟という絶対的なモノに縛られながら暴力のスパイラルに巻き込まれ、最終的に絆も仁義も吹き飛ばされてしまうが、いわゆるその辺も含めこれがジョニー・トー的映画内リアリティ*1@香港黒社会編というヤツなのだろう。前作に比べるとアクションも見せ場も多めで、それを含め怒濤の展開を見せるが、映画は二時間を見事に切る。

まぁ、でも、やっぱりこの作品はなんと言っても中盤に出て来るジミーの拷問シーン。これに尽きると思う。長渕剛の『しゃぼん玉』思い出してしまった。ハンマーでボコボコ殴って、骨砕いて、その後両腕を切り落として、それをさ――――ね?――――淡々と無表情でやるルイス・クーの演技もあいまって戦慄を覚えた。つーか、マジしゃれになんねぇ。映画の中でそれ見て吐いてる人いたけど、オレも観ててオエッってなったもん。

というわけで、『インファナル・アフェア』三部作という大傑作シリーズに負けるとも香港黒社会二部作『エレクション』はやはりおすすめ。っていうか、ジョニー・トーって映画ファンの間でもどれくらいの知名度なんだろう。ぶっちゃけ香港映画好きなぼくですらデビューが遅かったし、意外と知られてないのかもしれないなぁ。ジャッキーもシネコンでどかどか上映するわけじゃないし、もっと香港映画を普通に公開するような環境になってほしいと切に願うのであった、楽しいよ香港映画は。あういぇ。

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