鈴木杏がアバズレの役!?そんなバカな!『軽蔑』

『軽蔑』鑑賞。もちろんブリジット・バルドーの方ではない。

名家に生まれた遊び人カズ。彼は親の金で散々遊び尽くしたあと東京に行き、新宿でヤクザまがいの悪さをして、店で舞台に立っているストリッパー真知子と恋に落ち、逃げるようにして実家に戻ってきた。ところが、親はそのストリッパーと付き合うことを快く思っておらず、まぁ、どうせ遊び相手だろうとマンションを与えた。ところがカズが本気であることがだんだんと分かり始めると、名家に泥を塗ることになるから別れろという。彼女を一方的に罵倒されたカズは、逆上し包丁を持って親に向っていくが返り討ちに合う。そのことを知った真知子は、元々地元に居場所がないことも手伝って、それをきっかけに新宿に帰ってしまう。彼女に逃げられたカズはそのショックから、ギャンブルにのめり込むようになり多額の借金を作ってしまうのだが……というのが主なあらすじ。

昭和の文学のかほり漂う破滅的なストーリーと鈴木杏が脱ぐということに惹かれ観に行ったのだが、川越シェフの言葉を借りるなら「キャッチャーミットを構えたところに思ったとおりの球が来た」という印象であった。

廣木隆一監督の演出はほぼ完璧。手持ちカメラのロングショットの長回しを多用することで、不安定に揺れ動く気持ちと何が起こるか分からない一足触発の雰囲気を見事に切り取っていく。それだけでなく、家一軒を燃やして、爆破させるなど、映画的な絵作りもキッチリしており、渡された脚本に忠実かつ、自分のやりたいこともすべりこませているように感じた。ここぞというときだけクローズアップを使うなど、近年の日本映画にはない、けど昔の日本映画にはあった映像がかえって新鮮であった。

レンズフレアも照明も気にせず、街に出てゲリラ的に二人を撮影するあたり『勝手にしやがれ』みたいだなと思っていると、そのまんまラストでそれをやったりして、やっぱりそうだったか!とニヤリ。それどころか、どこかで見たことあるような映画的な記憶が蘇るシーンが数カ所あり、それを言ってしまうとネタバレになるので言わないが、まぁその辺の映画ファンにも楽しめる作品になっている。あ、そうそう、『軽蔑』で画像検索するとそのシーンがまるまる出て来てしまって、完全にネタバレになるので注意が必要だ。

ハッキリ言うと、そのタイトル通り、軽蔑の目で見てしまうようなどうしようもない人間のクズが主人公なので、感情移入出来ないぶん、そのクズがどれほどまでにその女に入れ込んでいるのか?を描くのがキモだと思っていたのだが、この部分は成功してなかったように思う。完全に挿れてます的な、こっちが見るのも恥ずかしいくらいの激しい濡れ場は3回*1出てくるのだが、あまりそこが執拗に描かれなかったため、身体も心も離ればなれになれないという感じには見えなかった。それであれば、もっとラブラブな様子を描くのに時間を費やしてもよかったように思うが、その辺の描写もあまりなく、舞台が現代だったということもあって、退廃的な雰囲気が出なかったというのが原因ではないかと思われる。

今の映画において喫煙シーンが山ほど出て来るのには驚いたが、携帯とか登場してしまうとねぇ、チラっと見えるだけでもちょっと萎えてしまう。つうか、親金持ちで何不自由無く暮らしてるのに、あんな風にねじ曲がるか?オレはそうは思わんがな!――――とまぁ、これはぼく個人の感想なので気にしないでいただきたい。

そして、なんつっても鈴木杏であるが………思い切って言っちゃうけど………ミスキャストじゃね?
だって、男たち誰もがメロメロになるような、アバズレ女に見えねぇんだもん!こう思わずむしゃぶりつきたくなる感じが一切ない!しかもそれが後半にキーになっていくだけに残念でならない。

いや、もちろんかなりがんばってはいたし、あれが限界だったようにも思うんだが、顔がかわいらしいわ、ショートカットだわで、ホントに色気が全然ないんだよ!体つきもさ……いや、ぼくはああいうの好きだけど、グラビアアイドル的なスタイルの方がよかったんじゃないのか?熊田曜子つーかなんつーか、こないだの『ヌードの夜』の佐藤寛子とか、あの辺ですよ絶対に!主人公の元カノ役で蒼井そらが出て来て、おっぱい見せるんだけど、あっちがストリッパーの役でしょう、どう考えても!

高良健吾も見た目100点なんだけど、役から優しさだけがにじみ出ていて、どうも怖さが……

逆に言えばこういう破滅的なストーリーをさわやかな二人でやるとどうなるか?という実験的な目線では見られるわけなんだが……それをどう捉えるかで評価はかなり別れそうではある。

というわけで、主演二人と監督とあらすじの時点である程度予測出来たのだが、その悪い意味での予測まで当たってしまった『軽蔑』。監督はヨーロッパでの評価も高いらしいので、『浮雲』や『勝手にしやがれ』が好きなシネフィルにはおすすめしたいところ。2時間15分という長尺には耐えられると思うので、興味ある方は観にいってもいいのではないかと。あういぇ。

*1:正常位ではふんはふん、騎乗位ではふんはふん、トドメに着衣のままバックではふんはふん。