逮捕されないならオレが逮捕する!『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』

『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』鑑賞。新潟は遅れて今頃公開。そしてもう上映は終わってしまったという…

外に出て捜査することを嫌い、ひたすらデスクワークをしている引きこもりのアレン刑事と、腕っぷしが強く、猪突猛進形のテリー刑事はそりが合わないながらもコンビを組んでいた。前者はマヌケで銃も撃ったことがないという理由から、後者はワールドシリーズの時に誤ってスタープレイヤーを撃って以来、同僚から忌み嫌われる存在に。そんな彼らとは真逆にド派手な捜査でアクション映画顔負けの活躍をするコンビがおり、署内は彼らとその他の刑事(アザー・ガイズ)というくらいハッキリとした格差が出来てしまっていた。そんなスター刑事が宝石強盗を追跡中に事故死してしまう。彼らに対してルサンチマンをつのらせていたテリーがそのポジションを狙おうと強引にアレンを引き連れ積極的に事件を解決しようと躍起になるが、アレンの些細なミスから最初に二人で追うことにした事件をパーにしてしまう。その場に居づらくなってしまったテリーはアレンが個人的に追っていた小さい事件を無理矢理追うことになるのだが……というのが主なあらすじ。

リーサル・ウェポン』や『バッド・ボーイズ』、『ラッシュ・アワー』など、刑事のバディものをベースにしたアクションコメディで、それらを徹底的にパロディ化した冒頭からアクセル全開。基本的にアホか!というくらいくだらないギャグと下ネタの応酬であり、それがしつこいくらいに繰り返され、もういいよ!とお腹いっぱいになるくらい。ギャグのひとつひとつは細かく、言っていることと字幕がまったく違う部分もあり、元ネタが分かりづらいところも多々あるが、バジェットはゲストとして登場する大スターと爆破、銃撃戦、カーチェイスにほとんど消えてるのではないか?というくらい贅沢な画作りでその辺はノリノリで楽しめること必至。映画は徹底的にくだらないというアメリカンコメディの神髄のような作品であり、少しばかり方向性は違うが、そういう意味では『ホット・ファズ』を彷彿とさせる。

設定やセリフ、展開はバカバカしさに満ち溢れているが、映像はかなり凝っていて、静止画の中、酒を飲み倒すシーンを連続して写すのは『バッファロー'66』のようなスタイリッシュさがあり、超スローモーションの間を2丁拳銃で駆け抜けるのはジョン・ウーであり、カーチェイスのド派手さとこれ笑っていいのか?という下世話なギャグはマイケル・ベイのようでもあった。音楽のセンスはバツグンで、サントラ単品はコンピ盤としての魅力も充分。TLCのギャグもそのままサントラにいかしてしまうという凝りようである。

ところが、この作品。とてもタイムリーな問題を含んだ展開になっていき、最終的には『インサイド・ジョブ』も真っ青の世界金融危機は一体どうして起きたのか?という部分に深く踏み込んでいく。それまでさんざっぱらバカをやってきたのに、急に肩に力が入ってしまうほど真面目なトーンになるのである。『イングロリアス・バスターズ』でラストに○○○○が撃ち殺されるシーンと同様のカタルシスが待っており、そこからのエンドクレジットは大変素晴らしいので是非終わっても最後まで楽しんで観ていただきたい。逮捕されないなら映画の中だけでも逮捕してやる!である。

というわけで、バカバカしいギャグに中学生レベルの下ネタ、ド派手な銃撃戦にカーチェイス、爆破とこれ以上映画に何を望む?という典型的なポップコーンムービーとして大満足。字幕で補えなかったセリフのやりとりを吹替でどのくらいカバーしているのかが気になるので、DVDも楽しみである、あういぇ。