「チャリエン」のノリをそのままに『Black & White/ブラック&ホワイト』

『Black & White/ブラック&ホワイト』を先行上映にて鑑賞。原題は「This Means War」

CIAの凄腕エージェントであるFDRとタックは仕事上のパートナーであるだけでなく、私生活でも“オレらは家族だ”と表現するほどの親友同士。そんなふたりが偶然おなじ女性に恋をしてしまったからさぁ大変。彼女の“本命”になるべく、彼らはCIAの設備を駆使して、彼女とデート合戦をくり広げる。ところがそんな中、彼らに弟を殺されたイギリスのテロリストが復讐すべく、彼らのいるL.A.にやってきてしまい……というのが主なあらすじ。

奥さんの浮気をさぐるためにスパイするという『トゥルー・ライズ』のワンエピソードと、自分の素性を隠して恋愛しながら任務をこなすというジャッキー・チェンの『ダブル・ミッション』に『冒険者たち』と混ぜたようなお話で、本格的なガンアクションにマーシャルアーツ、カーチェイスとてんこもりだが、基本はコミカルでシリアスなシーンはひとつもない。故にリアリティのかけらもないので、そこは荒唐無稽なものと割りきって観ることが必須条件である。

もうすでに試写会などで作品を観たひとから「なんであんな女を取り合うの?無理がある」なんて言われかたをしているリース・ウィザースプーンだが、キュートな演技でコケティッシュな魅力をふりまいていたように思う。クリス・パイントム・ハーディーという、決して大スターではない注目株を配置したのも大正解だったし、それぞれのキャラをいかしたセリフ回しと固有名詞の使いかたも絶妙で脚本に愛を感じた。

監督は『チャーリーズ・エンジェル』を手がけたマックG。今回はその手腕がいかんなく発揮され、テンポや場面転換の妙はそのまんま「チャリエン」のノリを引き継いでいる。コミカルでロマンティックなシーンには既視感すら覚えたが、アクションシーンでは得意のクイック&スローなモーション感覚を封印し、スピード感だけを重視。恐らくドラマパートが多めだったこともあって、上映時間が長引くことを危惧したのだろうが、かえってその地に足のついたアクションシーンに好感を持った。

ただ、ひとりの女性をオトすためのデートシーンを、出会いから一夜を共にするまできっちりと段階を踏んで描いており、それがふたりぶんもあるので中盤くらいから飽きが来てしまう。ギャグをおりまぜながらもなんとか工夫しているが、やってることは変わらないので、延々と同じことが繰り返される感じだ。

さらにいうと、そのドラマパートの割合のせいか、サブプロットである「主人公に弟を殺されたテロリストの復讐」の部分があまりに少ない。最後の最後に取ってつけたように出てきて、瞬時に終わってしまい、映画の構成としてかなり盛り上がりにかける。もちろんやってることはド派手で画こそもつんだけど、決着のつけ方があまりにもあっさりしており、普通だったら、あのシークエンスから、さらにもうひと盛り上がりするんだろうが、その手前で終わって宙ぶらりんになってしまったという感じだ。伏線をはったりさりげないセリフだけで状況を分からせるなど、よく出来てる部分も目立つだけに残念である。

とはいえ、この作品はオチがそうとう気持ちよく、そのための伏線がさりげなく用意されているなど、終わりよければすべてよしという感じで、そういった細かい不満もオチで吹き飛んでしまった。映画ってそんなものである。

というわけで、本格的なアクションにキュートなラブコメが合体している『ブラック&ホワイト』は『チャーリーズ・エンジェル』がお好きなひとなどにおすすめしたい。若干、下ネタを含むため、家族で観にいくのは厳しいかもしれないが、カップルで観にいったり、その内容から野郎同士でワイワイ盛り上がるのもいいだろう。