ビックリするほどスピルバーグ愛『宇宙人ポール』

宇宙人ポール』をレンタルDVDにて鑑賞。ツタヤのワンコーナーを占めていたので、まだまだ回転率も高いのだろう。

アメリカに強い憧れを持ち、SF&コミックオタクであるイギリス人のグレアムとクライヴは、コミコンとUFOが目撃されるという場所を訪れるために、キャンピングカーをレンタルし、アメリカを旅していた。人生で最高に楽しかったというコミコンのイベント後、エリア51付近を走っていたら、追い抜こうとしてきた車が突然大破!!様子を見に近づくと、中からポールと名乗る宇宙人が現れる………というのがあらすじ。

奇しくも同時期に公開された『SUPER 8』よろしく、頭からしっぽの先までスピルバーグオマージュに溢れた一作。ここまでやるか!?むしろここまでやる意味があるのか!?というくらいのてんこ盛り感で、まずそれだけで楽しい。あげく、本人がとんでもない形で登場するというサプライズもあり、しかもそれがあの名作の誕生秘話につながってるというお遊びになってるあたりもかなりニクい。

いろんなところで言われてるように、ベースになってるのは『未知との遭遇』と『E.T.』なのだが、個人的には「自由の国と謳ってるわりに、保守的で実は自由であることを最も憎んでいる」という『イージー・ライダー』の要素もかなり強いなと思った。それだけに飽き足らず古き良きアメリカ映画の引用は枚挙にいとまがなく、それを探すだけで複数回観れるように出来ている。そして、最後の最後で登場する大物ゲストとふいをつかれた展開に思わず泣いた。映画ファンであればあるほどそのおもしろさは無限大に広がっていくこと必至である。

これらの映画愛に溢れた脚本を書き上げ、自ら主役をつとめるのはサイモン・ペグとニック・フロストゾンビ映画にポリスアクションと自らが好きだったジャンルを鮮やかに再生していく二人だが、今作ではその二人をまとめあげたエドガー・ライトではなく、グレッグ・モットーラが監督を務めた。これまたボンクラオタクが主人公の映画を撮ってきた監督なので、相性はバツグン。道中で出会った宇宙人と友情を育みながら、故郷へ帰す手伝いをするという超シンプルなプロットに独自のウエット感で深みを与えた。

上記のような文章を読むと映画好きにしか楽しめないのか!?と思うかもしれないが、基本的にはそういった引用の数々はこれみよがしではなく、クスっと笑える程度におさまっており、誰が観ても何の問題もなく楽しめるのが強み。特にタイトルにもなっている宇宙人のポールというキャラクターがバツグンで、サイモン・ペグとニック・フロストのコンビの邪魔をするどころか、ナイスなやりとりを見せる。アメリカにアコガレを持ったイギリス人がアメリカのイヤな部分を体験しながら、それでもアメリカってステキな国だよなというのを宇宙人にみるのがなんとも皮肉が効いていて、これはイギリス人だからこそ出来た作品なのかなとも思った。

というわけで、まぁ、誰が観ても「おもしろい」ということ必至の『宇宙人ポール』は絶賛レンタル中なので、この夏にビールでも飲みながら、ダラダラと観ることをおすすめしたい。『未知との遭遇』と二本立てにしてもおもしろいだろう。それにしても、ツタヤ独占なのか、他のレンタル屋には置いてないんだよな……そのへん、なんとかならんか?

宇宙人ポール [DVD]

宇宙人ポール [DVD]