『THX-1138』をBDで鑑賞。
25世紀の未来。人間は地下のシェルターに閉じ込められ、精神安定剤のようなものを服用し、感情を抑圧され、ロボットのように淡々と作業を続けなければならなくなってしまった高度管理社会が舞台。このシステムに疑問を覚えたLUH-3417(人間はすべて番号で呼ばれている)がルームメイト、THX-1138の精神安定剤をすり替えたことから、感情が芽生え、ふたりは恋に落ちてしまう……というのが主なあらすじ。
とても暗く、とても静かなSF映画であり、コッポラがその才能を見込んで製作が開始されるが、それがなんと『2001年宇宙の旅』が公開されてから一年後の1969年というのだから驚く。当時アメリカン・ニューシネマの台頭がきており、テーマ的にはその系譜に位置づけられるものの、いかんせんその作風は早すぎた。宣伝が充分じゃなかったと言っているが、確かにどうやってこの作品を売っていいか分からないだろう。作品は映画会社によって改悪され、見事にコケ、日本では未公開だったが、ルーカス自身『スター・ウォーズ』でその名を轟かせ、その後テレビ放映やソフト化で日の目を見る。
日本でもルーカスファン以外そこまでの知名度がないように思うが、「ガタカ」や「アイランド」は間違いなくこの作品に影響を受けており、特に前者はビジュアル面に、後者は設定をそのまんま利用しアクション映画に作り替えて、ひとひねり加えたものになっている。
高度管理社会という意味では「マトリックス」にも影響を与え、スピルバーグも「今まで見た中でも屈指のSF作品でこれ以降の映画に多大な影響を与えた。『ブレードランナー』の短いロングショットの連続は間違いなくこの映画からだよ」と語っており、さらにフランク・ダラボンはこの作品を観て映画に目覚めたという。
ちなみにぼくが観たのはディレクターズ・カット版であるが、ところどころCGで手が加えられていて、それもよかった。これには賛否両論あるだろうが、『スター・ウォーズ』と違って、作品の世界観を壊さない程度に地味に手が加えられており、実際観てるあいだはこの当時でこの技術が使えたってすごいなーとダマされたくらいだ(窓の外に広がる外観など)。
さて、個人的には『2001年宇宙の旅』や『未知との遭遇』よりも感銘を受けた大変素晴らしい作品であるが、実は観る前に一悶着あった。なんとこのソフト。デッキに入れても、再生されないのである。
Twitterでどうなってるじゃい!と書いたところフォロワーさんにこういう注意書きがありますよと教えていただいて、それ通りにしてもまったく再生されなかった。
自分でも調べてみたところ、Amazonではこんな怒りの声も。
http://www.amazon.co.jp/gp/forum/cd/discussion.html?ie=UTF8&asin=B003W9Y4BM&cdForum=Fx7WKBS9CPM5NS&cdThread=Tx1KZPEXN00CS4M
ぼくの再生機器はディーガであり、まさに上記の人たちと同じようなことが起きたわけだが、PS3にぶちこんだところあっさりと解決した。それでも普通の再生機で再生されないという仕様はいかがなものかと改めてこうしてエントリにした次第である。
ちなみにBDにはこれの元になった短編「電子的迷宮/THX 1138 4EB」が収録されていたり、監督自身の音声解説やドキュメンタリーも多種多様に入っていて、ボリューム満点。内容が素晴らしいだけにこの仕様は早急になんとかしていただきたいものである。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/10/06
- メディア: Blu-ray
- 購入: 1人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (1件) を見る