二時間マジでカーチェイス『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

マッドマックス 怒りのデス・ロード』鑑賞。

公開されたと同時にすさまじい熱量の感想がツイッターに溢れかえった。さらに新しく観た人が前に観た人の感想をリツイートしたりして、TLが「マッドマックスヤバイ」だらけになった。『マッドマックス』でこうなら『スターウォーズ』のときはどうなるんだろう……と、熱狂的なファンが多い映画の影響の強さを改めて思い知った。

あるシリーズの新作が、何十年ぶりにその監督によって撮られたり、リブートしてみたり、プリクエルなんつって、時間をさかのぼって作ってみたりということが目立ってきたが、それらのなかでいちばん反応がよかったかもしれない。今まで「おもしろいんだけど……もう一声……」みたいな人たちにとってはやっと出てきたどデカい打ち上げ花火だったのだろう。

ぼくはそこまで『マッドマックス』シリーズに思い入れがあるわけではないが、実際『怒りのデス・ロード』はすさまじかった。

ジョージ・ミラーは『マッドマックス2』を作るまえに古今東西ありとあらゆる映画を観て、映画の構造について勉強し、研究したという。特に影響を受けたのが、黒澤のサムライムービーとジョン・フォードの西部劇だった。結果『マッド・マックス2』はディストピアな世界をがっちり作り上げ『用心棒』と『七人の侍』と『駅馬車』がぶちこまれた驚異的な映画となった。

もちろんこれが下敷きになってるわけだが、今回ジョージ・ミラーは近未来のコンセプトだけを残し、セリフも極限まで削って、2時間カーチェイスし続ける映画にしあげた。よく「2時間〇〇するだけの映画」なんて言い方をするが、それの極北というか「なんやかんやでそれ以外のシーンも多いじゃん」なんてことはなく、文字通り2時間の上映時間のほとんどがカーチェイスに費やされている(むしろそれ意外のシーンも片手がない人と殴り合いしたり、母乳が搾取されたり強烈である)。これはかなり潔い作りで、もしかしたら、これ系の映画がこれから増えるのではないかと思うほどであった。むしろなんで今まで作られなかったのか。いきなり座頭市がでてきて二時間斬りまくるだけの映画とかあってもいいのに。いちばん近いのは『シューテム・アップ』かもしれないが。

正直、新しいマックス役に選ばれたトム・ハーディーが思ったよりも活躍せず、おいしいところはシャーリーズ・セロンに持ってかれているきらいはあるが、ふたりとも違和感なく、もう一本くらいはこの二人でやったらんかい!というくらいのハマり役。改造車や衣装はほぼそのまんまだが、新キャラも全員魅力的でジャージャービンクスみたいなことになってなかったのは特筆に値する。あのギター弾いてるヤツとかちょー楽しい。

というわけでたいしたこと書けなくてもうしわけないが、マッドマックス好きな人もマッドマックスに興味ない人もおすすめ。パンフレットも値は張るが読み応えありです。っていうか『サンダードーム』見返したいから早く誰か返却して……


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