チョウ・ユンファの『弾丸坊主』

休みなので、調子こいて、昼間っからビールを飲み、チョウ・ユンファ主演の『バレットモンク』鑑賞。すいません、WOWOWで観てたんですけど、泥酔して観たという無茶苦茶な状態だったので、まったく覚えてなかったっす。

でも『ドラゴンボール』の事もあってですね、ちゃんとハリウッド進出してからの作品を観ておこうと思って観たんですよ、ジョン・ウーが制作総指揮として名を連ねてるし、でも、、、、これ、改めて観て思ったけどひどくないか???ちゃんとした感想を書いてなかったので、一から書く。

バレットモンク [DVD]

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ストーリーを聞くと、ものすごくおもしろそうだ。時は1943年のチベット。不老不死になり、スーパーパワーを得る事が出来る巻物をユンファ大兄が受け継いだのだが、その巻物をナチの残党が奪いに来る。。。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』かよ!と言いたくなるようなストーリーで、ここにカンフーやワイヤーアクションが絡み、さらにチョウ・ユンファが主演ならば絶対におもしろくなるに決まってる!と思ったのが甘かった。

まず、チョウ・ユンファ演じる名無しのモンクだが、巻物を守るためにアメリカに居るのは何故なのだろう?せめて、ランボーのようにタイの奥地に居るとか、絶対に見つけられない場所でひっそりと暮らさなければならないんじゃないだろうか。予言通りって言ったって、わざわざアメリカに渡る事はないだろう。

チョウ・ユンファは巻物を守るための後継者を捜していて、たまたま地下鉄で遭遇したちんけなスリにその無限の可能性をみるのだけれども、そのスリってのが、ボンクラじゃなくて、そこそこ強い。しかも、なんで強いかと言うと、カンフー映画ばっかり上映してるグラインドハウスに勤めていて、そこでカンフー映画ばっかり観てるからという、「おいおい!それだったら、カンフー映画好きを公言してるオレだって、よっぽど強いわ!」と言いたくなり、どうも、そのスリに感情移入が出来ない。スリはユンファから巻物をあっさり盗む。んで、その後、地下鉄を縄張りにするチンピラに拉致される。ユンファはいきなりその場所に現れてるのだが、巻物を持ってる不老不死のユンファの能力がどういうものなのかよく分からない。弾丸をかわせる能力があるとか書いてあったが、そこまで表立ってあるわけでもない。ユンファはそのスリの力を見たいため、あえて、チンピラに絡まれたスリを助けない。チンピラ軍団のボスとスリが対決。なんと、あっさりスリが勝ってしまう。そのボスには女が居て、スリはその女に一目惚れする。ところがその女の素性は分からない。そのボスともセックスしたりしない。一体彼女は何者なのか?というのが物語のキーポイントになってるのだが、なんと、その正体が分かったところで物語にはなんの関わりもなく、ぶっちゃけどうでもいい設定だった。もちろん他にも、ユンファ大兄を追う組織のよーわからん発明品の数々やら、一体どうやって運営しているのかという疑問などなど、完全なご都合主義で進んでいくので「なんでそうしたのさ!」と言いたくなるシーンは全体の8割くらいを占めてたのだけれど、まぁ、この辺はアクションシーンがかっちょよかったらどうでもいいわけで、そのアクションシーンに期待!なんだけど、

これがヘッタクソでねぇ!!

ワイヤーアクションはいかにも吊りますというか、吊ってるだけ、ぶら下がってるだけみたいなかっこ良くない写し方で、もしかしたら監督はそんなに香港映画を好きな人じゃないんじゃないか?「こういう風にすりゃ、とりあえず香港映画っぽくなるざんしょ」という感じがやたら鼻に付く。もちろんカンフーアクションもCGを使ったありえない動きも全てが緩い。香港映画のアクションシーンの何がすごいって、CGを使わないで、人をワイヤーで吊り上げて、アクションを芸術的に見せたところでしょ。『天地黎明』とか『天地無限』とかさ、ハリウッドでCG使っても再現不可能みたいなところまで行ってるじゃん。それはやっぱり土台がしっかりしてて、ワイヤーはあくまで添え物というか、しっかりとカンフーアクションがあって、それを拡張させるという意味でワイヤーがあるのに、この監督はワイヤーでぶら下げとけばとりあえずOKみたいな感じで、カンフーアクションは二の次みたいになってる。もちろん他のアクションの写し方も言わずもがな。

んで、『バレットモンク』は、ポスターやら、DVDのジャケットなどでチョウ・ユンファ2丁拳銃が良く出てくる。当時、『バレットモンク』で2丁拳銃は終わりという噂もあったので、このポスターのビジュアルは嬉しかった。チョウ・ユンファ2丁拳銃というのは、カレーにライス、コーヒーにクリープくらい必要な物で、ジョン・ウーだから2丁拳銃なんじゃなくて、やっぱりチョウ・ユンファがやるからこそ、栄えるみたいなところがある。現にヴァンダムやトム・クルーズ2丁拳銃はやっぱり違った。チョウ・ユンファはきっと、こう持てば、スクリーンに栄える角度とかも全部知ってるんだと思う。ブルース・リーが美しいカンフーを見せたように、チョウ・ユンファ2丁拳銃のマエストロという感じで、芸術的に拳銃を操ってくれる。んで、『バレットモンク』ではその完璧なポージングで2丁拳銃をかっちょ良く持ってくれるんだけど、、、、

ほんの30秒もないでやんの!!!

ホントにそのポスターで使うためだけのカットかい!!「待ってました!」と拍手しようと思ったら、すぐに投げ捨てて萎えた。「メグ・ライアンが本格的に脱いだ!」という文句に釣られて、思わず見てしまって萎えた『イン・ザ・カット』くらいショック!!!

という事で、ストーリーはガタガタ、アクションはボロボロ、袋とじを開けるが如く楽しみにしてたユンファ大兄の2丁拳銃は一瞬だけという事で、身も心もズタボロにされてしまった『バレットモンク』には、「『バレットモンク』だけに、文句しか出ないわ!」というジョークで締めくくるしかないくらい脳をやられてしまったのである。

14日の夜
16時にまたビールを飲んで、さらにお風呂に入って、エディソン・チャンのハメ撮り画像をのんびりダウンロード。そして18時に鍋を喰らいながら、飲み続けるという至福の時を過ごし、『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』鑑賞。『バレットモンク』があの体たらくだったので、お口直し。

ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌 [DVD]

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久しぶりに観たのだが、悪役がアンソニー・ウォンだったのには驚いた。全然覚えてなかった。今回見直して思ったのは、チョウ・ユンファトニー・レオンアンソニー・ウォンも全員演技がうまいという事だ。特にトニー・レオンの演技が秀逸。怒りと悲しみと憎しみを含ませながら、善と悪に揺れる感情を表現したのは見事としか言いようがない。

アクションに関して言えば、ジョン・ウーの最高傑作だろうし、後半に超絶な長回しがあったのも全然覚えてなかった。ストップモーションとスローモーションと通常ショットのモンタージュが完璧で各キャラの感情に合わせて使い分けてるのもお見事。ジョン・ウーは映像テクニックをつぎ込まないイメージがあったが、オーバーラップをベタに使ったり、カットバックも極端に使っていて、かなり映像的に気合いが入ってるのも分かる。香港映画を一切観てないヤツが「香港映画ってカンフーだけで、役者もB級でしょ?」と言うと本気でぶち殺してやりたくなるが、そんなノータリンも絶対にノックアウトする事必至の『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』はやはり傑作。

15日は7時45分出勤なのだけれど、なんか寝れそうにないんで、ずっと起きてようかなぁ、どうしようかなぁ、これから『男たちの挽歌』でも観ようかしら。あういぇ。