2009年のベスト1は『エグザイル/絆』で決まりだろう。

休み。『エグザイル/絆』に向けて、予習ということで、ジョニー・トーの映画を4本レンタル。借りたのは『ブレイキング・ニュース』と『フルタイム・キラー』と『PTU』と『エレクション』

『ブレイキング・ニュース』を鑑賞。

いやぁ、これはすごい!映画が始まって、8分間の超絶な長回しに、カットバックの代わりにスプリットスクリーンを効果的に使った爆破シーンや、クライマックスのバスとバイクのチェイス長回しと息も付かせぬ作品。全編クライマックスかよ!と言わずにはいられないほどに、アクションが連続!連続!連続!連続する。無理に台詞で説明させる演出は皆無で、役者の表情や映像の力ですべてを語っていく展開に、ペキンパー魂をみた。

ただ、『ヒーロー・ネバー・ダイ』の時も思ったんだけど、やっぱりジョニー・トーの映画ってちょっと変。『ブレイキング・ニュース』でも、いきなり警察とギャングが撃ち合ってる中、休憩して、料理を作り、料理を通じて友情を深めるという、異様なシーンがあったが、ただ、それもこれも含めて、香港でのアナーキーな作りを久々に堪能した快作だ!

16時45分より、シネ・ウィンドに久しぶりに行く。

行ったのは、ゴダールの『はなればなれに』を観て以来だから、7〜8年は経ってるのかな?もっとか。シネ・ウィンドって惜しい映画館で、新潟にある唯一の単館系なんだけど、いかんせん、公開される映画が全部おもしろくなさそうというところが致命的で、ヘンにアート系やドキュメンタリーばっかり上映してるから行ってなかったんだけど、『エグザイル/絆』はシネ・ウィンドしかやってないので、しかたなく行った。つーか、新潟にはシネコンが市内に4つもある異常な都市なんだから、どっかでやれよ!似たようなくっだらない映画ばっかり公開しやがって!

まぁ、そんなこんなで懐かしい匂いのするシネ・ウィンドにて『エグザイル/絆』鑑賞。

のっけから言わせてもらうが『エグザイル/絆』は人生のベスト10に確実にランクインする破格の傑作だった。これは「おもしろい」とか、「いい映画だった」とかでは片付けられない、香港映画史の頂点に君臨する信じられないレベルの神映画。ここまで映画的な表現を極めた映画は観たことないし、それだけでなく、ケレン味も、様式美も、香港映画特有のアナーキーさも、ドンデン返しも予測不可能な展開も、激しいバイオレンスも、男の生き様も友情も、ぜんぶ、ぜーんぶあって、さらに 100分しかないという濃密さも素晴らしい。無駄に長い映画が多い中でここまで簡潔にすべてを言い切れる映画はそうない。全編脚本無しでさらに役者のアドリブで魅せるパーフェクトな演技、心情を的確に表す完璧な音楽、ぶっちゃけ、クライマックスのレッドブル蹴りは、男泣き必至の名シーン(つーか、ごめん、声出して号泣しました)で、けなすところなどひとつもない完璧な映画だった。

『エグザイル/絆』という作品は、エイゼンシュタインが作り出した映画の芸術的表現にペキンパーの魂がブレンドされ、鈴木清順の様式美とレオーネのタメと黒澤明のダイナミックさが、渾然一体となって観る者を圧倒する。というか、今までの偉人が築き上げてきたものをしっかり自分の中に取り入れ、新たな作品に昇華させる事が出来た奇蹟の映画だ。

そもそも映画というのは、モーションがエモーションを生むというだけあって、映像だけで感動を作り出す事が出来るモノなのだ。だから赤ちゃんの泣き顔や酒を投げるカットだけで、主人公達の心情が全て心に響いてくる。脚本が無くたって、しっかりモンタージュさせれば、そこから別な意味が生まれて、キャラクターが膨らみ、物語が転がって行く。

そして、それは偉大な先人達が築き上げてきたものだったはずだ。最近はそれをつい忘れがちになってしまう。近年のセリフ過多な映画や説明的な映画に僕たちは毒されている。役者の顔をしっかりと映せば、複雑な感情さえ表現出来るのだ。それはサム・ペキンパーが『ガルシアの首』や『ワイルド・バンチ』でやって来たことだったじゃないか。

『エグザイル/絆』は誰がなんと言おうと、近年の映画の中では遥か高い位置にある傑作。後半の展開に『ワイルド・バンチ』を連想する人も居ると思うが、個人的には『ワイルド・バンチ』と肩を並べると断言してもいい。とにかく文句言うヤツは完全無視します。

あー『ザ・ミッション』が観てー!あういぇ。

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