ザ・バンク 墜ちた巨像


すいません実は『ザ・バンク 墜ちた巨像』観てました。観てたんですが、あまりに『エグザイル/絆』がおもしろすぎたんで、飛ばしちゃいました。

『ザ・バンク』はいい意味でオールドーな匂いのする快作。巨額を得る為に国と国の戦争やテロに資金を調達する国際銀行に立ち向かうインターポール捜査官の話。『ラン・ローラ・ラン』や『ヘヴン』『パフューム』など、作品ごとに作風がコロコロと変わるトム・ティクヴァの本格的なポリティカル・サスペンスだ。

最近、予告編でネタバレをする映画が多く、正義が悪をやっつけようとする映画を観ても「どーせ主人公死なないっしょ?」とか「予告編でああいうシーンがあるんだから、ここピンチでも切り抜けるでしょ?」と思ってしまう事が多々ある。『パイレーツ・オブ・カリビアン』なんかがそうだったが、観てる側からまったくハラハラしない。ゴージャスな画面とそれらしい戦いを散りばめて、クライマックスを作り上げる映画も多いが、そこに中身など皆無。「そういう雰囲気」や「そういう感じ」という、観客をナメきった映画が量産されてると思うのはぼくだけではあるまい。

そこへ行くと、この『ザ・バンク』はすごい。何がすごいって、「これホントにこの巨大な悪に勝てるの?さすがにやばいんじゃないの?」と思えるほどに敵の存在が強い。ジャッキー映画のウォン・インシックの如く、「これは絶対に勝ち目がない」と思える戦いなのだ。敵のしっぽを掴んだと思ったら、すぐに手から離れ、新しいしっぽが出て来たと思うと、それは全然違うものだったりして、主人公同様に観てる方をやきもきさせる。

敵の存在が強いだけじゃない。『ザ・バンク』はストーリーの予測が一切出来ない。レールに乗ったと思うと、急に分岐点を変えられたようにストーリーが二転三転していく。脚本を書いたのは新人のエリック・ウォーレン・シンガーだが、ここまでのストーリーを考えた事がすごい。まだまだ才能というのは眠ってるものだと思った。

トム・ティクヴァはスタイリッシュな映像を封印し、『ヘヴン』で培った空撮を上手い具合に駆使して、スケール感のあるストーリーを見事に再現した。

『ザ・バンク』の一番の見所はなんと言っても中盤の銃撃戦だろう。『ヒート』以来の迫力、『カリートの道』を思わせる緊迫感、絶体絶命という言葉が頭の中に浮かぶ、珠玉の名シーンである。

という事で、『ザ・バンク』はかなり地味な印象も与えるかもしれないが、かなり上出来の娯楽作だと思う。おすすめです。