ハッキリ言おう!オレは『Dr.パルナサスの鏡』が大好きだ!!


Dr.パルナサスの鏡』鑑賞。

『サヨナライツカ』の前に観てたのだが、あまりにムカついたので、先に感想を書いてしまいました。

さて『スペル』の時に「『死霊のはらわた』のサム・ライミが帰ってきた!」という言葉をよく見たが、『Dr.パルナサスの鏡』にはこう言いたい。

『『バロン』のテリー・ギリアムが帰って来た!』

そもそもテリー・ギリアムの新作がまともに公開されたことをまず喜ばなくてはならない。このお方、熱狂的なファンを持つ監督なのだが、一般的にはまったく知られておらず、そのくせ莫大な制作費をかけるので、映画はコケ放題。エンディングを巡って裁判を起こしたり、ジョニー・デップドンキホーテをやろうとしたら、作ってる途中で中止になったりと踏んだり蹴ったり。今回もそうだった、なんと主演のヒース・レジャーが急逝したことでまたも撮影が中断してしまったのである。

ところが、今回はそのヒース・レジャーが演じた役柄を別の3人が演じることで危機を乗り越えた。鏡の中に入ったら、顔が何故か変わってしまうという『男たちの挽歌2』顔負けのウルトラC級のアイデアで映画を完成させたのだ。

テリー・ギリアムの持ち味と言えば、なんと言っても絵画的な空想力と悪夢のビジュアル化。彼を知るには代表作である『未来世紀ブラジル』と『バロン』を観れば充分なのだが、特に後者は全てのカットが絵画から抜け出して来たみたいな圧倒的な美しさで、彼のビジョンを再現するために金喰い虫と言われる美術と衣装に予算をつぎ込んだことは想像に難しくない。

Dr.パルナサスの鏡』も鏡の中に入ると自分の想像の世界に行けるという特異な内容なので、ギリアムの圧倒的なビジュアルが見れると思ったのだが、今回はその空想を再現するのにCGがかなり使われていて、これが大正解。今やCGは映画にかかせない存在となったが、極めて正しいCGの使い方で幻想的な世界を文字通り映像化してみせた。巨匠の才能が枯渇していくなかで、ギリアムのイマジネーションの力はまったく衰えを見せてない、むしろCGと出会ったことで大爆発している感じだ!!しかも現実世界の描写も廃墟のような場所を選んだり、着てる衣装から馬車まで凝りに凝っていて、まったく飽きさせない。

ヒース・レジャーが注目されがちだが、他の役者陣も最高だった。特に悪魔を演じたトム・ウェイツ。ぶっちゃけ、キャストロールを見るまで誰か分からず、名前が出て来た瞬間に、どっかで聴いた事ある声だと思った!!と驚いてしまったくらいのハマり役だった。『バロン』のユマ・サーマンを思わせるリリー・コールもホントにキレイでうっとりしてしまった。

ただ、やっぱり何処かで、この映画は未完成なんだという印象も少しあった。それほどまでにヒース・レジャーの演技が素晴らしく、誰にも似てない唯一無二のスタイルで観る者を圧倒する。鏡の中に入ると別人になるというアイデアも最高なのだが、顔が変わってしまうことを説明するために随所で余計なシーンが足されてるように感じてしまって、コリン・ファレルを出す為の伏線も説明してますよ感がたっぷりだった。特に冒頭で鏡に入るシーンは顔が変わるということだけを説明しようとしていて、後々考えるとそこまで必要か?とも思ってしまった。もちろん、彼らのヒース・レジャー完コピ演技は最高だったのだけれど。

とは言いながらも、映画にしか出来ないストーリーとアイデアはさすがのギリアム節。というか、いつものギリアム映画だけど、パワーアップしてる!というのがやっぱり率直な感想だろう。もちろんスクリーンで見ないと意味がないと思うので、『サヨナライツカ』を観に行こうと思ってる方はすぐに『Dr.パルナサスの鏡』に変更しよう。そして、『Dr.パルナサスの鏡』に魅せられた方は『未来世紀ブラジル』と『バロン』も観よう!やっぱりギリアム最高だ!あういぇ。

あ、と言いながらヒース・レジャーが出た『ブラザーズ・グリム』をまだ観てなかった…すいません。

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知らない間に『バロン』のBD出てやがった…