スピルバーグの『1941』を再評価せよ!

スピルバーグ監督の『1941』が見たくなったので久しぶりにDVDにて鑑賞。

世間的にもスピルバーグ自身も失敗作としていて、ある意味でフィルモグラフィーから抹殺されてるような節もあり、唯一DVDがなかなか発売されなかったりと不遇な扱いを受けてる作品だが……

オレは『1941』が死ぬほど好きなんだよ!あんまり悪口言わないでくれよな!

タイトルが示す通り、1941年のアメリカ、真珠湾攻撃を喰らった6日後の12月13日が舞台。もしかしたらまた日本軍が攻めて来るんじゃなかろうかと不安に駆られる住民と軍人たちの24時間を描く。

『1941』の何がすごいって徹頭徹尾ドタバタしてるというところ。

よくドタバタコメディなんていうが、この作品ほど徹底しているのはそうない。『底抜けてんやわんや』もストーリーに関係なくジェリー・ルイスが無言でドタバタと駆け回るだけの映画だが『1941』はそれを遥かに上回るスケールと人数でのドタバタっぷり。数分に一回は必ず何かが破壊され、まったく映画に関係ないところで爆破が起きるなど、とにかくあっちへドタバタ、こっちへドタバタ。キャラクターというより映画全体がドタバタしてるという方が正しいだろう。もう全編見せ場、全編クライマックスともいうべきテンションの高さで、ここがおもしろいですよ!という説明が一切出来ない。ジャッキー・チェンの『プロジェクトA』で陸軍と海軍が酒場で大げんかするシーンがあるが、あれが全編に渡って繰り広げられるという感じだ………そう書いたものの、実際『1941』では陸軍と海軍がダンスホールで大げんかするシーンがあるんで、きっとジャッキーも参考にしたに違いないとか思ったりしていて、しかも『ドラゴン・ロード』で見せた壁を使ってのバク宙と同じシーンがあったりとか、なんだよジャッキーもこの映画好きなんじゃん!それにしても『ドラゴン・ロード』はジャッキー映画の中でも『ヤング・マスター』の先を行こうとした傑作だったよなぁ。ウォン・インシックもまた出てるし!……って、えーっとなんの話だったっけ?ああ、そうそう『1941』の話だった。

個人的に『1941』は出演者やその内容から『ブルース・ブラザース』や『アニマル・ハウス』と比較されるべきだと思っているのだが、なんであっちは良くてこっちはダメなのよっ!『1941』のジョン・ベルーシだって、最高に狂ってて、最高にかっこいいじゃないか!なんでこっちはなかったことにされてるのよっ!!もっと言えばアルトマンの『M★A★S★H』にも負けるとも劣らない作品じゃないか!なんであっちはカンヌのパルム・ドームでこっちは失敗作なのよっ!!

まぁとにかくぼくは戦争とドタバタが大好きです!というスピルバーグの意思表示というか、彼が真にやりたかったことだけが純化された結晶のような作品が『1941』なのである。

脚本はあのロバート・ゼメキスとボブ・ゲイル。徹頭徹尾狂ったようにドタバタを繰り広げると書いたが、たったひとつのミスが掛け違えたボタンのようにズレてズレてズレまくって行き、それがとてつもない連鎖反応を起こし、とんでもない結末を迎えるという構造は実のところ正攻法で、全編ひっちゃかめっちゃかなわりには土台がしっかりしてるため型くずれしていない。

豪華なキャストも見逃せない。今となっては伝説の役者たちが大挙出演しているので、その人たちの顔を見るだけでも充分楽しい。しかも三船敏郎クリストファー・リーウォーレン・オーツも全員均等にバカというところも大変素晴らしい。ジョン・ベルーシダン・エイクロイドはいわずもがな。

興行的には大コケと言われる部類なのかもしれないが、失敗作の烙印を押されてるあたりも含め、なんかその感じも『1941』っぽいじゃないか!オレはそんな『1941』をこれからも観続けるし、評価し続けるぞ!『1941』最高!『1941』万歳!『1941』に幸あれ!『1941』を再評価せよ!あういぇ。

1941: Original Motion Picture Soundtrack

1941: Original Motion Picture Soundtrack