3Dで髪の毛ウネウネ『塔の上のラプンツェル』

正直な話、ディズニーは元々あまり好きじゃなかったのと、あの絵柄に食傷気味だったこともあって進んで観ようという気にはならなかったんだけど、ジョン・ラセターがいっちょ噛みした『ボルト』は楽しかったし、スルーしていた『プリンセスと魔法のキス』がとんでもない大傑作だったので、『塔の上のラプンツェル』もその流れも汲んでるだろうとレイトショーで観て来た。それにしてもなぜ新潟のレイトショーの客は行儀の悪いドン百姓カップルばかりなのだろうか。映画が始まろうとしてるのに3Dメガネがどーしたこーした――――始まる前に何か買って来よーっと言って本編ギリギリで帰ってくるヤツ――――もううっせー!――――なんてことをTwitterでつぶやいていたら、東京はレイトショーの方が静かで良いですというRTが返って来て、またまた驚いてしまった。

ストーリーは至極単純。幼少の頃魔女にさらわれて18年間塔から出ることを禁じられて育てられたラプンツェルが外の世界に興味を持ち始めたところから始まる。その塔に大泥棒であるフリンが逃げ込んできたことから自分が教えられてきたことと外の世界は違うようだと気づき、魔女をダマして、彼にガイドをしてもらい外の世界に飛び出していく。

外の世界を知らない王女さまが一般的な男性に連れられて珍道中といえば『或る夜の出来事』や『ローマの休日』などが有名だが、今作ではそれをベースに『インディ・ジョーンズ』のようなアドベンチャー仕様になっていて、男の人も女の人も楽しめるようになっているのが特徴。主人公たちは歌い踊り、笑いも散りばめられ、アクションもラブストーリーもしっかりと演出されているので、100分でお腹いっぱいになれること必至。コストパフォーマンスはまるでラーメン二郎のように高い。

特に驚いたのはカメラワークだ。CGアニメということもあって、なんでもやりたい邦題なわけだが、今作のカメラワークは奇怪で、なんでそんな撮り方をするのだ!?というのがずーっと続いて行く。だからと言ってそれが「あからさまに奇を衒ってまっせー」というドヤ顔ではなく、グリングリンカメラを動かすわけではないのに、画角から動きから、何気ないシーンひとつとっても奇妙奇天烈である。

ぼくは3Dで鑑賞したのだが、今作ではその3Dの特製が十二分に活かされている。それを感じたのは髪の毛の描写だ。立体的にそれぞれのパーツが常に揺れ動き、3Dによって、奥と手前に別れたそれらが有機的に絡み合ってウネウネ動くのは見ていて単純に気持ちが良い。それ以外で3Dでやる意味はあったかと聞かれれば、まぁないだろうが、その髪の毛が生き物のように動くさまを3Dで見るだけでも価値があるのではないだろうか。

というわけで、王道プリンセス物語にちょいと変態的なフレーバーが加わった『塔の上のラプンツェル』はやはりおすすめ。前作でジャズテイストだった音楽も今回は王道の路線に戻っている。ただ、物語の冒頭で大泥棒が語り部となってナレーションを入れるんだけど、あれ詐欺じゃないか?だって言ってることとラストの展開が違ったじゃないか!まぁネタバレになるので言わないけど。あういぇ。