ぼくがピンチになってるとき、君はどこ行ってたの?『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』

トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』を3Dで鑑賞。

スマステにツキイチゴローというしょうもないコーナーがあるが、あそこで偉そうに映画を語ってるナルシスワインバカとは意見が合わず、数回事故的にそのコーナーに出会って、その度に「二度と見るか!ボケが!」と思っていたのだが、このクソナルシスワインバカと感想がモロかぶりした映画が『トランスフォーマー』だった。

「だって!車が変型してロボになるんだよ!?夢がある!!」とかそんな感じで興奮していた様子を今でも鮮明に覚えている。うん。悔しいがまったく同意見だ。

そんな中学生男子の夢が詰まったシリーズも今回で最終章。前二作は観ていたし、ジェームズ・キャメロンも絶賛していたし、『アバター』は未だに観ていないので、それに近い3D体験が出来るということもあり、長い映画は苦手ながらがんばって観て来た。

まず度肝抜かれたのは、主人公はミーガン・フォックスにフラれてしまったという設定になっていて、彼女がまったく出て来ないということ。あれだけの苦楽を共にしたにも関わらず、三たび地球が危うくなってるのに、彼女は元カレと連絡を取ろうともしないのだ!

いきなりそういった部分からシナリオに穴が空きまくりで、今回は2時間40分近い長尺ということもあってか、その酷さが増している。その分、笑いあり、泣きありとサービス精神も旺盛だが、裏を返せば、それはプロットの危うさを必死でごまかしているとも言える。確かに「これは!」という見せ場には興奮するものの、そこに至るまでのプロセスがろくすっぽ抜け落ちているので、見せ場が過ぎた後に結局なんだったの?と思ってしまった。

例えば、あの蛇みたいなでっかいのはどこでどう隠れているの?とか、いつの間に主人公はオプティマスと連絡とって行動してたの?とか、ジョン・タトゥーロの世話役のあいつはなんなの?とか、結局センチネルはあのビルで偉そうにつっ立ってたの?とか――――特に後半、開戦前夜をまるまるカットして、いきなり総攻撃が始まったのには空いた口が塞がらなかった。

プロット上の問題もさることながら、映像面で言えば、チャカチャカした編集がどうしたという以前に、カットバックを使わなかったというのは致命的な欠点だろう。

後半、怒濤の展開を見せるこの作品だが、登場人物が多い割に、ワンシークエンスを一団体の一人称で撮っていて、彼らがこういうことをしている時にオプティマスたちは何をしてたか?というのが一向に出て来ない。元々カット割が細かい監督だけに、それを考慮しての選択だと思うのだが、人間たちが結構な時間ピンチに陥っているのに、ロボットたちが助けに来るのがとてつもなく遅く、それが一切映されないため、いやいや、だからここに来る間に何してたのよ?という懸念が頭からぬぐい去れなかった。

主人公たちがピンチに陥ってる間はカットバックで彼らとロボットの行動を交互に映し、間に合うのか?間に合わないのか?みたいな緊張感を高めて行くのが普通だが、緊迫感がないどころか、そう言った「どこで何をしていたの?」という負の要素まで足されてしまったのでは、せっかくの見せ場が台なしである*1

しかし!そう言ったマイナスの要素をぬぐい去る映像体験が待っていたのも事実。もうこれ以上ないだろ!というような、文字通り「見たこともない映像」が次から次に洪水のようにやってきて、こちらを一瞬たりとも飽きさせない。特に人が鳥のように滑空するシーンを一緒に飛びながら撮ったとおぼしき映像には思わず声が出たほどだ。

トランスフォーマー』はロボットが変型するというのが最大の魅力だが、もうひとつの魅力は主人公がボンクラであるというところ。良い女をゲットし、あんなロボットとも友達になれたことで、彼はリア充の道を突っ走るかと思いきや、三作目である今作でもボンクラ度は高く、それには安心した。

地球を二度も救ったのに、彼の功績は社会的に認められておらず、無職でどうでもいい存在に扱われており、彼が唯一認められているのは、あのオプティマスやバンブルビーと親友であるということだけ*2

その彼がヒーローとして三たび蘇るという展開は『少林サッカー』であり、それが前半のドラマパートでのクライマックスなので、そこからの戦闘パートへの移行は否が応でも盛り上がる。

ハッキリ言ってしまうと映画は『ウォッチメン』のような仮想歴史があり、『AKIRA』のような破壊があり、野武士と侍を入れ替えた『七人の侍』をぐちゃまぜにしたような感じで、言ってしまえばボンクラ指数が高い。『少林サッカー』っぽいところも含めて、映画として欠点も多いこの作品を応援してしまうのは少なからずそういう要素が含まれているからなんだと再確認した。

というわけで、今までのシリーズを観ていて、好意的な印象を持っているならおすすめ。あ、あとバンブルビーがカンフーみたいな動きをしていたのはブルース・リーリスペクトなんだろうか。色も黄色と黒だし。マイケル・ベイは『バットボーイズ2』でも『ポリス・ストーリー』と同じことしてたから、香港映画ア↑コガレがあるのかも、あういぇ。

関連エントリ

トランスフォーマー ダークサイド・ムーン 超ロボット生命体編 - The Spirit in the Bottle
2011-08-02 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

*1:ただ、オプティマスが主人公たちを助けに行く時の遅れた理由が、コンテナを壊されて、そこに入ってたジェットがないと飛べない!というのはかわいいと思ってしまったが。

*2:あとヒモとして、またも良い女をゲットするところか――――あれは画面に良い女を出すための苦肉の作なのだ!君たちがイケメンで喜んでるのと一緒!もう二度とバカに出来ない!