『アベンジャーズ』へ最後の一手『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』鑑賞。

41年にナチと戦ったヒーローを今の時代に描くということで、一体どうなるんだと思ったが、基本的には原作設定にかなり忠実。ぼく自身が読んだのは81年に生誕40周年として書かれたコミックであるが、ホントにこれをそのまんま映画に移し替えているという感じ。

わざわざ、この時代を感じさせるためにアイリスアウトを使ったりとデ・パルマのそれのような手の込み方で好事家ならその映像だけでニヤニヤすること必至。だからと言ってザック・スナイダーのようにマンガのコマをそのまんま映画にトレースするわけではなく、しっかりと一本の映画として作り込んでいるのが特徴。「ああ、これぞアメコミヒーロー映画の直球だなぁ」と思う一方で、原作を読まなくてもキャプテン・アメリカのことはほぼ網羅出来るような、ファンも納得の作りになっている。

画のタッチや色使いは『ウォッチメン』のオープニングに似ており、コミックとカートゥーンの間をちょうど保っている感じ。CGも多用されているが、アニメと実写の境目を狙っているかのように重量感はなく良い意味で軽い。それが実写ではあり得ないカクカクした動きを演出し、ある程度浮世離れしたアクションであっても、コミックっぽさが全面に出て違和感がないようになっている。コミックのような絵柄でありながら、やたらとカメラが横に動き、常にスピーディーなアクションがテンポよく続いていくなぁと思ったら監督はなんとジョー・ジョンストンということで合点がいった。

映画としては二時間の間にピークが二回来るという、二部構成であるため、二話分観たというようなテンポでダレない。二つの話の間にダイジェストとして「キャプテン・アメリカがどのような活躍をするのか?」というのが差し込まれているが、これが最大の見せ場であり、ここは『ウォッチメン』のオープニングシーンにも匹敵するほどのクオリティ。いちいち無駄に爆破シーンが散りばめられており、撃ったら人間が粉々になってしまうという銃や戦車などガジェットも楽しい。細かい部分よりもド派手な部分で魅せる、男の子が楽しむおもちゃのような作品である。

ただ、確かに楽しいのだが、この作品は明らかに『アベンジャーズ』の布石であり、完全に前フリでしかないというのが見え見えなのがどうもいけすかない。

今までの『アイアンマン』や『マイティ・ソー』はエンドクレジットの後にそれが明らかになることで、あくまで作品は作品、そして、『アベンジャーズ』の布石はボーナストラックであるというのを強調していた。ところが今作はアベンジャーズビッグ3の最後の大物がやってきたということで、なんと映画のラストがもう『アベンジャーズ』の布石になっていて、さらにエンドクレジット後の映像は『アベンジャーズ』の予告編という徹底ぶりである。作品のオチを放棄しているどころか、もはや、ここまで見たら、お前ら続きも当然見るよな?と胸ぐら掴まれた気分であり、ラストはラストで、ボーナスはボーナスとしてちゃんと別々に作り込んで欲しかったなぁと個人的には思った。

というわけで、まぁ、なんやかんやあるが『キャプテン・アメリカ』はアメコミヒーロー物の元祖的なキャラクターをポップにキッチュにノスタルジックに描いた良作。ジョー・ジョンストンファンはもちろん、『アイアンマン』と『マイティ・ソー』を見て来た人は絶対に必見である。あういぇ。