アダルティな英国産ダーティハリー『ブリッツ』

『ブリッツ』鑑賞。

犯罪者を徹底的に痛めつけられるという意味で、刑事の仕事を天職だと思っている男が主人公。その突拍子もない行動から新聞に叩かれ、謹慎処分を喰らいそうになってしまうのだが、警官が射殺されるという事件が発生し、猪突猛進な刑事としての実力をかっていた上司が彼を現場に呼び戻す。他の部署からやって来たゲイの刑事とコンビを組み、半ば犯罪スレスレの捜査をするが、そんな彼らをあざ笑うかのように第二第三の警官殺人事件が発生してしまう……というのがあらすじ。

ジェイソン・ステイサムと言えば、スタローンに新世代のアクションスターとしてのお墨付きをもらってしまった結果、ティーザーに登場するだけで、良い意味でB級テイストなポップコーンムービー感が漂ってしまう役者になってしまったが、今回は冒頭ワンカットからそういったイメージを払拭することに成功。

この時代によくもまぁ作りましたねぇというほどダーティな英国産犯罪劇であり、現代版『ダーティハリー』にして、主人公の行動しか描かれないハードボイルドの定石をしっかり守っている。血まみれバイオレンスはふんだんに盛り込まれ、常に登場人物たちはスコッチをガブガブと飲み、タバコをプカプカ吸うというアダルティな仕上がり。つい先日、我が日本でも『探偵はBARにいる』という上質なハードボイルド作品が公開されたが、同時期にこういう作品が並ぶというのはなかなか感慨深いものがある。

無骨なストーリーのわりに映像は意外と凝っているが、物語が動き出すキッカケになる節目節目のみカメラをぶん回すことで、決して奇を衒ってるだけではないことが伺える。

特に喉を撃たれた警官が倒れ、血が噴き出し天を仰いで倒れた後、上から瀕死の警官を写し、そのままクレーンでカメラが上がっていくと同時に雨が降り出し、噴き出した血がそのまま雨で広がっていくというシーンがあるのだが、ここは今までに観たことがないくらい独創的でカッチョ良いワンカット。そういったシーンを筆頭に、荒々しい場面では荒々しく、詩情にあふれたシーンではしっかりと腰を据えて撮ってるあたり、メリハリが効いている。

特に今作でのジェイソン・ステイサムはハマり役だ。ある程度のマネーメイキング力を備えながら、ガイ・リッチー映画の出身ということもあって、身体能力を見せるだけの役者でないことは分かっているため、その表情と声質だけでキャラクターを作り込んで行く。脇を固める役者たちも同様であり、あえて友情まで踏み込まないキャラクター同士の関係性も非常に小気味良い。

というわけで、正直、あまり期待していなかったが、思わぬ伏兵が潜んでいたという感じ。90分ちょいのランタイムのため、半ば強引に進んでいくが、そういった弱点を吹き飛ばすように細かい伏線と辻褄合わせもバシッと決まっているあたりも嬉しい。ジェイソン・ステイサムファンはおろか、『ダーティハリー』や『フレンチ・コネクション』などの刑事ものファンも必見である。傑作!あういぇ。