真実とはえてしてそんなものである『ソロモンの偽証』

『ソロモンの偽証 前篇・事件』と『ソロモンの偽証 後篇・裁判』を鑑賞。前者はテレビ放映で、後者はレンタルBDで観た。

ある学校の一人の生徒が屋上から転落死し、一人の生徒が「これは殺人です」という告発状を出し、そのせいで一人の生徒が疑われた。警察は自殺と断定したものの、真実はわからずじまい。「だったら私たちが学校で裁判して決着つけましょう!」というお話。

わりと早々に「告発状はウソでした」とタネ明かしすることにより、「ウソがいつかバレてしまうのではないか」というサスペンスが生まれ、そこになぜか本格的なホラー描写と、容赦がなさすぎる演出、さらに重厚かつトリッキーなカメラワークで魅せて魅せて魅せまくる。冒頭、子供の死体の顔を大写しにし、そこからカットを割らずにカメラが高く高く上昇していくシーンで傑作を確信。その確信以上にことが進んでいくので大興奮。そのいきおいのまますぐに後篇をレンタルした。


ここから誰がどうしたとはいわないが、ネタバレ


中学生だけで裁判をやるということでかなり勉強し、相当な期間を準備に費やしたわりに検察と弁護側でのやりとりがないし、わりと観客が知ってる(描いていなくても予測できる)ことを延々繰り返すだけなので、真実が明らかになるまでの後篇1時間40分はそこまで重要ではなく、だったら例の彼が怪しいというくだりは隠してしまってもいいように思えた。

結局裁判で明らかになったのは、一人の無実の人間をスケープゴートにすることで生まれる欺瞞であり「都合のいいように記憶をねじまげる」というのは奇しくもちょっと前にテレビで放映された『白ゆき姫殺人事件』と一緒であるが、とはいえ、結局いちばん悪いのはあの不良でしょう。なんで他の人が揃って「自分が悪いんです」「いやいや、自分が」「いやいやいや自分が」とダチョウ倶楽部みたいなことになっているのか。そもそも告発状に書かれた他のふたりはどこへ行ったのか。

「本当の裁判ではないため、すべてが明らかになっても裁かれることはない」というのがポイントになってるが、罪を背負えといってるわりに最後なんかヘラヘラしてるし、最初に警察が判断した「これは自殺であり、告発状は○○さんと○○さんによって書かれたもの」というのはほぼほぼあってて、途中で被告人が「もうアリバイが証明されたから終わってもいいだろ」というがまさにそのとおりだと思った。真実が明かされたところでそんなたいしたことでもなく、最終的にこの裁判はいったいなんだったのだろう……という気にもなった。結局あの自殺した子に言われた通り、主人公は独りよがりな自己満足の正義感を振りかざしただけの偽善者だったんじゃねぇのか……



ネタバレ終了


と、いろいろノイズになる部分は多かったが、スタッフとキャストの「おもしろい映画を作ってやろう!」という気概には満ちあふれていて、4時間30分はわりとあっという間だった。テレビでやれそうでやれない描写も満載で、これが映画だよなと改めて感じることも多く、こういう映画がもっともっと増えればいいなぁとも思った。あとこれは見てのお楽しみであるが『ダークナイト』の影響ってすごいのな。