誰か彼らに聞いてくれ「日本のロックはお好きですか?」と/The Strypes『Little Victories』

The Strypes(ザ・ストライプス)の新譜『Little Victories』を聴いた。

彼らのデビューは衝撃的だった。

メンバーの平均年齢16歳という、あどけなさの残る少年たちが鳴らす超本格派のロックンロールにぼくは魅せられた。特にボーカルのロス・ファレリーのパフォーマンスは実に堂々としており、どっしりとした声でシャウトもうまく、新たなロックンロールスターの誕生に立ちあってる気すらした。

ジャキジャキのギターソロも今となっては逆に新鮮であり、メロも分かりやすくキャッチーで、ザ・フーザ・ジャム、オアシス、マンドゥ・ディアオアークティック・モンキーズの系譜に乗ったバンドがもうひとつ出てきたなという感じであった*1

ファーストアルバムは勢いまかせでありながらも緻密に計算された曲が多かった印象があったので、二枚目はこれをブラッシュアップしてくるだろうなと思ったのだが、それは良い意味で裏切られる。

前作から3年経ってることもあってそこそこシフトダウンしてくるだろうと予想していたが、それを遥かに上回る落ち着きぶり。バックの音はスケールアップしているにも関わらずメロディラインが異常にキレイであり、オアシスやアークティック・モンキーズにもこうなってほしかったという願いが具現化したようであった。実際5曲目の“Queen of the Half Crown”はオアシスの“Bag It Up”やアークティック・モンキーズの“Do I Wanna Know?”みたいな雰囲気があるし、続く“(I Wanna Be Your) Everyday”もオアシスの『Standing On The Shoulder Of Giants』に収録されてそうな曲である。ファーストアルバムを改めて聴くと、この新譜よりも音楽的には勢いこそあるが老けてるというか、時代が逆行しているように感じられた。それくらい新しい音楽になってるということでもある。

レビューでは「まだこの路線は早い」とか「勢いがなくなった」といった意見もあるようだが(後輩から聞いただけで見てはない)、わりとスピード感あるロックンロールも多数収録され、全体のバランスとしてはちょうどいいのではないだろうか。やりたいことはわかるが決定的な何かがないオカモトズやマニアックになりすぎてるきらいがあるボーディーズなんかはこの感じに嫉妬しているはずである。こればっかりはセンスと聴き手の感性にいかに合うかということなので、偏った意見だが、とにかく頭一つずば抜けた存在なのだ。少なくてもぼくにとっては。

さて、ザ・ストライプスというバンド。実はファーストアルバムから少し思ってたことなのだが、すごく日本のバンドに影響を受けていないだろうか?

youtubeでありとあらゆる音楽が聴けるようになったこの昨今。ロックの勉強なんぞ時間と根気さえあればいくらでもでき、この若さでこういうバンドが出てきても不思議ではないが、ストライプスには日本のロックに影響された————というより日本のロックにとても似た楽曲が目立つ。

例えばファーストアルバムに収録されている。“Mystery Man”はドクターフィールグッドの影響を感じるが、それ以上にミッシェル・ガン・エレファントの“ブラック・タンバリン”にすごく似ている。

同じアルバムの“Hometown Girls”はイントロが布袋寅泰の“スリル”に似ており、車でかけてたら妹が「これ布袋?」って聞いてきたくらいだ。

今回のアルバムも同様に“Eighty-Four”はイントロがベースボールベアーの“ELECTRIC SUMMER”に似ているし*2、ボーナストラックの“Fill the Spaces In”はthe pillowsの“バビロン・天使の詩”、“Kick Out the Jams”は元々MC5のカバーであるが、これがミッシェル・ガン・エレファントの“G.W.D”に似ている(ちなみにオリジナルであるMC5の方は逆にミッシェルの“スモーキン・ビリー”に似ており、ミッシェルが影響を受けているのがよくわかる)。

とはいえ、いくらロックが好きだとしてもぼくはフランスやスペイン、タイ、韓国のロックバンドのことなどひとつも知らないし、そういうプロの方だって山ほどいるはずだ。そこから鑑みて、いくらyoutubeで山ほど拾えるからといってストライプスが日本のロックバンドのことなど調べて参考にするだろうか……もちろんロックンロールの基本となるリフだったりもするから、そこからの影響と言われれば日本のそれもそうなのだが、いくらなんでも音色から何から何まで似ている曲もあるくらいである。

今度来日したとき、誰でもいいから彼らにこう聞いてもらえないだろうか「日本のロックバンドを彷彿とさせる曲がいくつかありますが、日本のロックは好きですか?」と。

リトル・ヴィクトリーズ

リトル・ヴィクトリーズ

*1:ぼくはリバティーズもストロークスもあんまし好きではない

*2:元々ELECTRIC SUMMERはナンバーガールの影響で作られた曲なので、そっちにも似てるわけだが