荻野由佳センターだからこそ成立する人類愛/NGT48『世界の人へ』

結構前の話になるが、NGT48『世界の人へ』のタイプA、B、Cを購入した。酩酊状態でスマホから注文したのもあってか、タイプCだけが2枚届くというアクシデントがあった。みなさまも注意されたし。ちなみにそのもう一枚のタイプCはNGTファンである主任の奥さんにプレゼントした。
f:id:katokitiz:20181103181751j:plain
今回は「共に歌おう」という歌詞が象徴するようにファンが曲と一体になることを暗に要求してくるようなアレンジ。簡単にいうと意図的にMIXが打てないような作りになってる。コールドプレイの『Viva La Vida』丸パクリのイントロとほぼ同時に「オーイェイエー」というシンガロングがはじまってしまうし、四つ打ちリズムをハンドクラップに変えたことで、出だしから「手拍子をしながらみんな歌う」という曲のルールが自然と認識される仕組み。間奏は仕方ないとして(それでもバックではハンドクラップが鳴り続ける)、アウトロはなく、全員のアカペラによるカットアウトと徹底している。


Coldplay - Viva La Vida
コールドプレイの『Viva La Vida』イントロとかそのまんまである

そんなスケール感のあるアレンジに引っ張られたのか、歌詞のテーマも壮大でずばり「人類愛」を歌う。それこそかつてビートルズが『愛こそはすべて』を歌ったような絵空事とも思えるストレートな物言いだ。119カ国への配信というのも衛星を使って24カ国で同時に放送したビートルズのそれを彷彿とさせる。

深読みになるが『青春時計』は「輝きながら過ぎてく日々 いつかこの日を思うのだろうか?」と歌ってるように「アイドルとは青春を謳歌する時期をまるまる犠牲にしなければならない」という裏テーマがあったような気がするし『世界はどこまで青空なのか?』は「アイドルになることへの先行き不安感」と「それでもアイドルになる決意」をMVとワンセットでファンに提示した。『春はどこから来るのか?』は『青春時計』の主人公が成長したような内容になってて、淡い恋心を歌いながらも「自分から動き出さなければ何もはじまらない」という前作に対するアンサーみたいなフレーズも飛び出していた。

そのアイドルの是非から急な方向転換である。聴いててちょっと気恥ずかしくなるが、これは「本気で願えば夢は叶うよ」といったキレイごとを荻野由佳がアイドルとしてまんま体現してしまったことで成立しているのではないかと思う。つまりこの曲の世界観は彼女なしではありえない、彼女がセンターであることを当て書きしたかのようでもあるし、実際MVもその荻野由佳が明言してきたことをそのまんまなぞってるようなストーリーになっている。だからといって彼女のソロ曲なのか?といわれても違い、「荻野由佳がセンターのNGT48」であることが重要で、だからこそ、曲のアレンジは選抜メンバーによるシンガロングとハンドクラップが使われているのだ。

ぶっちゃけ、ここまでセンターのポジションと選抜メンバー、そして歌詞の世界感が完璧に機能している48Gの楽曲を他に知らない。今回たまたまウラジオストクにNGTのファンがいるということが分かって、そのことでMVも方向性も変わったが、もしかしたら世界配信といい、フェスへの出演といい、NGT48は他の48Gとは一線を画す存在になっていくのかもしれない………というのはさすがに贔屓目がすぎるか。

世界の人へ(Type-A)(DVD付)(特典なし)

世界の人へ(Type-A)(DVD付)(特典なし)

ちなみに今作はカップリングがすべて完璧で特典のショートムービーは同じ日の出来事が違う視点で何度も描かれるという『桐島、部活辞めるってよ』的な構成がおもしろかった。1枚は買って損ないかも。