“ハイテンション”に“愛、かましたい”

お久しぶりです。安田美沙子です。

5月から連勤続きと前に書いたが、12月に入ってもそれは変わらず、人材不足ということもあって、忙しくもないのに忙しいという謎の現象が続いている。万城目学の『プリンセス・トヨトミ』に、究極に人がいない中、仕事を辞める部下に対して「今お前がやめたら会社が回らなくなる」と説得する上司のくだりがでてきたが、まさにああいう感じ。

先週は10連勤もあって、一週間の労働時間が60時間を超えた。調べたら60時間は仕事中毒ということらしい。いや、仕事中毒というか、そもそも休みがほしいのだけれど……とはいえ、60時間なんてモンハンやったら一瞬で消え去る時の流れである。

これまで無趣味の人を下に見てきたが、今となっては何もしないことが趣味というのがうらやましくもある。全力で謝りたい。とにかくやることが多くて逆にストレスが溜まるのだ。黒川博行の新刊も出たし、エルロイの『背信の都』は読み終わる気配がないし、『ピクミン3』も途中だし、テレビ見れてないし、映画なんていくヒマないし、たまの休みになると動きたくないし、酒飲みたいし、タイヤかえなきゃだし、こんな歳だし、親も年だし、あなたしかいないし……

そんな合間をぬってAKBの新曲『ハイテンション』とNegiccoの新曲『愛、かましたいの』を聴いたのだが、これが両方とも良かった。いや、かなり良かった。

AKBのシングルに関しては個人的に『Green Flash』からパッとしないものも多く、ライブで栄える『ハロウィン・ナイト』に王道アイドルソング『君はメロディー』以外は正直どうでもいいものばかりで、逆にHKTと我らがNGTのほうが楽曲は充実してるように思えた。特に『最高かよ』に至っては、MIXを楽曲に盛り込んだという部分で話題になったが実はサビの構成自体は『ヘビーローテーション』からの換骨奪胎だったりして、もう一度全盛期AKBをやり直そうという気概すら感じた。

ところが島崎遙香卒業というアナウンスに合わせてリリースされた『ハイテンション』はそれまでメロもフワッとして、アレンジもピンとこなかったここ最近のAKBシングルのなかではダントツによい。

タイトル通り“ハイテンション”な楽曲で、モーニング娘。の『LOVEマシーン』と『恋愛レボリューション21』を足して二で割ったようなそんな印象を受ける。youtubeではマルーン5の『Moves Likes Jagger』みたいだという比較動画もあったが、それもなんとなく頷ける。『恋するフォーチュンクッキー』で培ったディスコ感を90年代まで押し上げたといってもいいかもしれない。とにかくぼくの世代にとってはドンピシャな曲だったのである。思わずCDも買ってしまった。中古で50円だけど。

そして改めてMVやテレビのパフォーマンスなどを見るとぱるるはホントにセンターにいるべき存在だなと、その思いを強くした。NGTの高倉萌香もそうだが、やっぱりどこか前田敦子感が彼女にはある。絶妙な不安定さというか、ポンコツさというか。ここにきて卒業はホントに惜しい。

Negiccoの『愛、かましたいの』は西寺郷太が確立させた2013年以降の路線を押し進めたような感じで、温故知新もしっかり決まった楽しい楽曲。

まだ二回しか聴いてないのだが、最初の印象でいうと、フレンチとサイケが混ざりあったポップなジャッカスといった具合。沢田研二の『危険なふたり』的イントロもあって後期グループサウンズという評価もできるかも。あとドアーズの『ハートに火をつけて』あたりも入り込んでる。

MVもなぜかショウブラ風でわざわざ香港ズームも出てくる。そういった意味でも全体的なコンセプトはオリエンタルな60年代カルチャーなのかもしれない(もしくは70年代前半)。

ぶっちゃけ前作の『矛盾、はじめました』はそこまでビビっと来ず、ああ、Negiccoもついにアーバンな方向にいってしまうのかと危惧したが、今回は何から何までサブカル心をくすぐる出来で大満足。気が早いが、ますますアルバムがまたしても楽しみになってしまうのであった。

愛、かましたいの(初回限定盤A)(2CD)

愛、かましたいの(初回限定盤A)(2CD)

いま『ハイテンション』の歌詞見てたんだけど、二番の「ワーカホリックは流行らない スイッチ切らなきゃ壊れちゃうよ マジメにやってもストレス溜まるだけ」ってオレのことじゃねぇか!!偶然にもほどがある!!