コントロール不能の気持ち『ディストラクション・ベイビーズ』

ディストラクション・ベイビーズ』をAmazonプライムにて鑑賞。
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そのタイトルの語感でいやがおうでも『コインロッカー・ベイビーズ』を思い出すだろうが、NUMBER GIRLの「DESTRUCTION BABY」からの引用であり、そのフロントマンであった向井秀徳が音楽を担当したのも必然といえる。内容的には『コインロッカー〜』のフォロワーである『ザ・ワールド・イズ・マイン』のヒグマドンが出ない版でケンカに明け暮れる男とそれに感化された高校生と彼らに拉致されてその暴力性に目覚めるキャバ嬢の破滅への旅を描く。

「清々しい程 破壊された君の心ん中 そのあと誰が入り込んだ?誰が住んでるの?DESTRUCTION BABY コントロール不能の気持ち(一部略)」と向井秀徳が歌ったように、主人公はこの世のすべてを拳ひとつで破壊して回りたい衝動に駆られ、無差別に暴力を振るう。やや中二病がかった設定ながら、ぼくがもしこの映画に十代で出会っていたら間違いなく感化されてただろうし、ある世代にとっては『タクシードライバー』や『ファイト・クラブ』のような衝撃を受けてもおかしくないと思う。

監督は商業映画初監督となる真利子哲也。インディーズ映画出身らしい破壊衝動とメジャー感のバランスが良く、黒沢清が絶賛するのも納得のロングショット+長回しによるケンカシーンは『その男、凶暴につき』以来の衝撃で、ただのケンカを遠くから見物しているような気にさせられてゾクゾクしたし、やたらと新鮮だった。

そのケンカに明け暮れる怪物を身体ひとつだけで体現した柳楽優弥がとにかく素晴らしく。これにケチ付ける人はいないだろうし、もっといえば同業者は全員嫉妬すること必至。その柳楽に負けじと菅田将暉小松菜奈といった若手トップクラスの人気者たちも「これに出ていいのか?」というくらいの役回りで体当たりの演技を披露。この三人をキャスティングした時点で勝利は見えていたといってもいいだろう。

ハッキリいって観る人を選ぶが、肌にあわなかったとしても何かしらの記憶にはしっかり刻み込まれる作品であることは間違いない。多分しばらくしてからまた観ることになるとは思う。書いてからわかったことだが、後に真利子哲也は影響を受けたであろう新井英樹の『宮本から君へ』のドラマ版を監督していて、ちゃんと主題歌はエレファントカシマシというこだわり(『宮本から君へ』の宮本はエレファントカシマシ宮本浩次から取っている)。こちらもAmazonプライムにあがっているので観るのが楽しみだ。