Fが通過します

Fが通過します

Fが通過します

「本」と言えば、みんなが今思い描いてる様に“あの形”をしているものである、ハードカバーであっても、文庫本であっても本は「本」であり、そこから逸脱する事は不可能にも思える。

佐藤雅彦の『Fが通過します』はそんな概念を逆手に取った作品である、本の形が縦に長く、さらに1冊が薄い、それが2冊箱の中に収められている、とても独創性に満ちた「本」と言えるだろう、私も初めて『Fが通過します』を見た時(ここで断っておきたいのは、読んだわけではなく見たという事)ベタなリアクションで申し訳ないのだが『これ本なんですか?』と言ってしまった、つまり本の形状としては、異常とも思える外観である。

じゃあ中身がそれに喰われているのか?と言われればそうではない、シュールな作品あり、ギャグあり、アートな作品あり、とてもクリエイティブな精神に満ちた内容で、実験的な要素がかなり濃いが、一般的にも『わけわかんないけど、おもしれぇじゃん』くらいのレベルなのではないだろうか?個人的にはすごく縦に長いという特徴を活かした内容になってると思う、2ページに渡ってたり、裏表を使っていたり、意表をついた作品がどんどん出てくる、完全に意味不明な作品もあるが、クスっと笑ったりもして、かなり楽しめた、2回3回読んでも、楽しいと思うだろう。

ただ、1つだけ弱点がある、それは値段だ、この本1200円なのである、これは高い、いっても1000円切る内容だと思う、それくらいさらっと読めてしまうし、内容もたいしたことない(笑)奇襲戦法なのはわかるし、普通にしたくないという気持ちも汲み取れる、だからこそあの形だったのだろう、それ故値段が高いのはしかたないことかもしれない、恐らく出版社もこれを作った作者も分かってる事なんだろうが、まずはお客さんに届ける事が大事だ、たしかに本屋に並んでいたら、手に取るだろうが、これを買おうと思ったら、かなり勇気がいる、だからこそ、こういう書評などが重要になっていくわけなんだけども、1200円はどう考えても高い、アート本と考えれば、安い方なのかもしれないが…

だが、それを抜きにしても、ハッキリ言って買って読む価値はある、実験的なぶん満点はつけられないが、傑作だ。