ユニコーンのニューアルバムがオリコンで1位

ユニコーンのニューアルバムがオリコン1位になったというニュースを見た。

 約16年ぶりに再結成したロックバンド「ユニコーン」の復活アルバム「シャンブル」が、3月2日付オリコンチャートに1位で初登場することが23日確定した。再結成したグループの首位獲得は史上2組目。かぐや姫が78年5月にLP「かぐや姫・今日」で記録して以来の快挙となる。

 「シャンブル」は今月4日発売のシングル「WAO!」に続いて18日に発売された。オリコンによると、22日までの集計期間で15万9000枚を売り上げた。

 首位獲得は、解散翌年の94年5月に発売したアルバム「THE VERY RUST OF UNICORN」以来。14年10カ月ぶりのインターバルは、邦楽グループではCHAGE&ASKAの8年6カ月を上回り最長。また、93年11月に発売したベスト盤「ザ・ベリー・ベスト・オブ・ユニコーン」も、前週の123位から54位に順位を上げ、復活景気に沸いている。

 奥田民生(43)らによる5人組。87年にデビューし“脱力系”の歌声とメロディーで一斉を風びした。93年9月に解散したが、今年1月上旬に再結成を表明。同30日にテレビ朝日ミュージックステーション」に出演して復活した。来月5日からは全国ツアー(34公演)がスタートする。各会場でチケットの争奪戦が繰り広げられ、追加3公演も決定したばかり。旋風は勢いを増しそうだ。

シャンブル【初回生産限定盤】

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それにしてもすごい、CDが売れないという中で、16万枚も売り上げた。いかにこのバンドの復活をみんなが待ち望んでいたかが分かる。しかも、意外とユニコーンはミリオンセラーがなく、邦楽史に刻まれる大名盤『ケダモノの嵐』ですら36万枚で、ベスト盤も100万枚は突破していない。だからこの16万枚というのはある意味で正当だったのかもしれない。昔好きだった固定ファンが一気に買ったのだろう。最近、復活だの再結成だの騒がれてて、サディスティック・ミカ・バンドの復活もスマパンの復活も嬉しかったが、やっぱり一番驚いて嬉しかったのはユニコーンの復活だった。『シャンブル』を買った人も同じような思いだったのかもしれない。

ぶっちゃけレンタルしようと思っていたが、やっぱり買う事にしてツタヤに行った。

ユニコーンの『シャンブル』のメイキングDVD鑑賞。いいなぁ、楽しそうだなぁ。40歳を過ぎて、こんなにはしゃぐ事が出来るというのは素晴らしい事だと思う。椎名誠が仲間とキャンプして、それを本にしてる感じ。遊びのプロ。遊んでいてかっこいいと感じさせるバンドがユニコーンだが、その雰囲気が十二分に伝わるDVDだった。しかし当時20代で『すばらしい日々』を書き上げた奥田民生だが、まるで再結成を予感してたような歌詞になってるのがすごい。

「朝も夜も歌いながら 時々はぼんやり考える 君は僕を忘れるから そうすればもうすぐに君に会いに行ける」

ホントにいいフレーズだなぁ。

それにしてもレコーディング風景が、ホントにおもしろい。いい意味で遊んでいる感じが伝わるし、このDVDを観てからアルバムを聴く事を断然におすすめしたい。リーダーの西川が曲の方向性を決めるミーティングの時にカメラに向かって「一応プロの現場です」と言ってて笑ったが、そのいい意味で肩の力が抜けてる感じがいいのだろう。

ユニコーンの『シャンブル』を聞くが、ぶっちゃけかなり良い。もちろん『ケダモノの嵐』や『服部』『ヒゲとボイン』には到達してないし、それらを越えられるとも思ってないが、出来上がった物はユニコーン以外の何者でもないというアルバム。シリアスから振り切ったバカな曲まで、バランス良く配置された15曲。曲順も完璧だ。

いきなり『開店休業』を思わせる阿部Bの『ひまわり』とその後の奥田民生による『スカイハイ』がとにかくとにかくすばらしい。特に『スカイハイ』は『恋のかけら』のような奥田民生そのものというルーズなロックンロールだが。後半に行くにつれて、うねり上がって行くバンドのグルーヴ感が凄まじく、久しぶりに奥田民生も高音にメロディを置いたり、シャウトしたりとユニコーンの奥田として面目躍如。しかもタイトルが『スカイハイ』そのうねり上がって行くグルーヴ感を象徴するかのような歌詞世界とタイトルも含めて、ライブで聞きたいナンバーになった。

シングル曲になった『WAO!』は言わずもがなで、今までのユニコーンのイメージをまったく壊す事が出来なかった、“らしさ”全開の楽曲。しかもサビのライトハンドやサビが真ん中で出て来て、それで終わるという人を喰ったようなアレンジも、その場の思いつきというのも彼ららしい。この3曲で充分過ぎるくらいのクオリティだが、ナイアガラ+バカラテンという雰囲気の『ボルボレロ』や、井上陽水奥田民生でもよく披露するなんちゃってムード歌謡路線の『ザギンデビュー』、『パパは金持ち』を彷彿とさせる、彼女をセスナで迎えに行く歌詞がユニークな『キミトデカケタ』、ここ近年の大不況の中で生きるおっさんの生き様をベタなロックンロールで歌う『オッサンマーチ』、箸休め的な『AUTUMN LEAVES』を抜けて、蛇口が壊れて水が止まらない事を歌にした『水の戯れ 〜ランチャのテーマ〜』や、川西節全開ながら、それをEBIが歌うという変化球のロックンロール『BLACKTIGER』など中盤から後半のユニコーンっぷりがたまらない。

個人的に一番感動したのは奥田民生の『最後の日』という曲の歌詞だ。別れを決めた男女が高級ホテルでスティーヴィーワンダーを聞きながらシャンパンを飲み、ムードたっぷりに過ごし、最後の晩餐をするかと思いきや、あれよあれよと言う間にセックスをするという(笑)ユニコーンらしいずっこけナンバーなのだが、これよく考えると、代表曲の『Maybe Blue』を笑い飛ばすような歌詞で、最後の夜にムードたっぷりにセックスをするというのは、当事者にとってはかなり切なく、何とも言えない感情が巻き起こってる出来事だが、描く視点によってはギャグにもなるというのを提示した曲で、しかもそれを、自分たちの過去の曲をネタにしてしまうというのが、ユニコーンらしいと思った。しかも曲調もかなりおとぼけだ。

その『最後の日』を抜けると、後はヘビィでシリアスな感動モード全開のナンバーが炸裂。レニークラヴィッツの『Rock And Roll Is Dead』をもじった『R&R IS NO DEAD』、そこから『サラウンド』『パープルピープル』『HELLO』という大作が並ぶ。

個人的な感想だが、『シャンブル』はユニコーンの中で一番バンドっぽいアルバムかもしれない。そして、一番若々しいアルバムだ。『BOOM』や『PANIC ATTACK』は若々しいのではなく青々しいので、初期の2枚とは違う若々しさを感じる。スピルバーグが『マイノリティ・リポート』を撮った時のような若々しさがあって、老けてない事がとにかく分かるアルバムなのだ。

特に奥田民生が持ち込んだ楽曲の『スカイハイ』と『サラウンド』と『パープルピープル』がソロ名義での曲っぽいのだが、それが奥田民生の曲でなく、ユニコーンの曲になってるのがおもしろい。まさにそれはユニコーンだけが持つグルーヴ感だし、ユニコーンだけが持つマジックだろう。ユニコーンというバンドは全員が曲を書き、全員がボーカルを務める、ビートルズ的なスタイルを踏襲しているが、『服部』に収録されてる『ハッタリ』や『ジゴロ』はあきらかにネタであり、それはバンドサウンドとは違う方向に行っている。もちろんそのネタもユニコーンの最大の魅力だったのだが、『シャンブル』はそのネタ的な部分を最小限にとどめ、あくまでもバンドで音を鳴らすという事の楽しさを全面に押し出した。『シャンブル』はコンセプトの無いアルバムだが、聞いて受ける印象は、「オールドなロックンロールやビートルズが大好きなおっさん達が集まって出来た楽しいモノ」だった。

という事で、下手に3000円そこらを出して、新人バンドを発掘するくらいなら、ユニコーンのニューアルバムを買った方が何倍もマシなので、是非買う事をおすすめする。なんつってもDVDが最高に楽しいぜ。あういぇ。