出来ちゃった結婚の別な言い方。
「誰の子だ、、、、父親は?」
小太りだがビシッとスーツを着込み、脂ぎった顔の男が、お腹の大きくなった愛娘テレサに抑え気味に詰め寄った。
男は大聖堂の様な広さの部屋にある椅子にどっしりと座り、アンティークの机にある葉巻に手を伸ばすと、そっと火をつけ、充分にふかした後、笑みを浮かべた。目が笑ってない事は明らかだった。周りには男の部下や血縁関係にあたる者が静かに立っていて、その様子を緊迫した面持ちで見ている。
テレサは体格の良い男達数人に囲まれながらも、凛とした立ち姿で、目の前に居る男、父親をにらみ返した。
にらまれた父親は笑うのを止め、目で部下達に合図を送る。その瞬間、テレサの周りに居た男達が、テレサの着ていた服を切り裂いた。乳房があらわになりながらも、テレサは何事も無かったように立ち続け、「あなたに言う事など何一つないわ」というような意志を崩そうとはせず、父親をにらみ続けている。
父親は俯きながらも、「仕方が無いな」というような諦めにも似た表情を浮かべながら、葉巻を持つ手を下に降ろした。
次の瞬間、周りに居た男がテレサの腕と関節を押さえ、真後ろに引っ張った。「ぎゃー!!!!」苦悶の表情で泣き叫ぶテレサを何事も無かったように見つめながら父親は立ち上がった。
「答えろ!」
天井の隅々まで響き渡るように怒号が飛ぶ。部屋に居た女性陣は心配そうに見つめながらも、手を出す事は出来ないというもどかしさを感じ、拳をにぎる。さらに父親が目で合図を送った瞬間、一人の女性が立ち上がり、
「やめて!!!」
と叫んだ。その叫び声と同時に、バシンという音が響き渡り、テレサは倒れた。泣きながら頬を抑え、キッとした目でまたにらみつけると、観念しつつも屈服するもんかという芯の強い声で
「アルフレッド・ガルシアよ!!!」
と言い放った。
「医者に見せないと」
「あんまりだわ」
「ひどすぎる」
今まで見守っていた女性陣がマリアを取り囲み、手を肩にかけて連れて行こうとした、そこへ父親の隣に居た四角い顔の男が、マリアの目の前に来ると、首からぶら下げていたペンダントを引きちぎった。女性陣が退室していく中、四角い顔の男にペンダントを渡された父親は、ペンダントの中に入っていた写真を見つめながらこう呟いた。
「息子同然だった」
父親はペンダントをそっと四角い顔の男に返すと、すっと立ち上がり、椅子の後ろに飾ってあったショットガンを手に取ると、意を決したように部下達に告げた。
「よく聞け!100万ドルの懸賞金を出す!ガルシアの首をとってこい!!」
アメリカでは出来ちゃった結婚の事をショットガン・ウエディングというらしい。上記のようなやりとりがあったかどうかは不明だが、いかにもアメリカらしいナイスな言い方である。
その起源は、妊娠させられた娘の父親が、相手の男にショットガンを付き付けて結婚を迫ったこと*1。転じて、娘を妊娠させてしまった男は父親に挨拶をするとき、ショットガンを突きつけられ、「おい!小僧!オレの大事な娘を妊娠させるとは、どうおとしまえ付ける気だ?あん?」と脅される。男は怯えながらも幸せにする事を誓わないといけない*2。そこで父親はコロッと態度を変え、「そうか!そうか!よし小僧!バーボンでも飲むか!がははは!!」と祝福するという。
日本でも娘を取られる変わりに親父が婿を殴るなんて伝統もあるが、それよりも数倍のインパクトがあって、めちゃくちゃかっこいい*3。何でもかんでも横文字にすればいいってもんじゃないというおっさんも多いだろうが、ショットガン・ウエディングは言葉だけでなく、その起源からして、アメリカンでかっこいいのだ。
今、日本では出来ちゃった結婚が増えているという。確かにぼくの周りでも出来ちゃった結婚した人は多い、言っちゃえば市民権を得てるような気さえする。交際数ヶ月で誰かが結婚すると聞けば、必ず言うのは「何?もしかして出来ちゃったの?」だし、芸能ニュースでも「あの人気女優、おめでた婚!!」なんてのをよく見るようになったし、何よりもタレントが婚約発表をすると、「まだ妊娠はしていないという」などと、補足が付くようにもなった。
そんな昨今だが、出来ちゃった結婚と言い方はよくないという事で、ブライダル業界では別な言い方をし始めたというニュースを見つけた。
デキ婚が市民権を得つつあるが、避妊のミスで子どもができちゃった、というネガティブなイメージもある。そこでブライダル業界では数年前から、「おめでた婚」「授かり婚」「エンジェル婚」などと言い始めている。
「デキ婚」をサポートするサービスをしているLADIRBでは「ママ」と「マリッジ(結婚)」を組み合わせて、「ママリッジ」と呼んでいる。結婚情報誌「ゼクシイ」(リクルート)では「ダブルハッピー婚」と呼んでいる。結婚と赤ちゃんを授かったことで、2つの幸せ(ハッピー)という意味だ。
「エンジェル婚」、、、、「ママリッジ」、、、、「ダブルハッピー婚」、、、、
ファック!!!
ダサい!!ダサ過ぎる!!!
言い方を良くしたところで、ネガティブなイメージがある日本では違和感を感じる事必至だろう。そもそも出来ちゃった結婚になると、どうなるのか?
まず、スーツを着込んで、相手方の両親に挨拶しなければならない。申し訳なさそうに「順番が逆になってしまいましたが…」と怒り心頭の親父の顔色をうかがいつつ、頭を下げるというのが基本のスタイルだ。なので、根本的にそこを変えなければ意味が無いと思う。
それに比べれば、アメリカのショットガン・ウエディングは豪快でちょっとしたサプライズとユーモアもあって、最終的には祝福するってんだから、素晴らしい。前に女子高生が妊娠する『JUNO』を見た時、妊娠しても誰も怒らなかった事に驚いて、『14才の母』とは大分違うなぁと思ったが、そこから言っても、アメリカでは日本よりも出来ちゃった結婚を深刻に捉えてないのかもしれない。
だからぼくはあえて、「ダブルハッピー婚」なんかよりも、ショットガン・ウエディングと呼ぶ事を推奨したい。だってショットガンウェディングだよ!かっこいいじゃん!!
↓ネタ元一覧。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%A6%96
http://blogs.yahoo.co.jp/inmanuel1331/54833792.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13766693
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