完全復刻版 新寳島

17日夜
ビールを4缶くらい飲む。最近、というか、前からビールは大好きなのだけれど、ホントにここ4日くらいビールに飢えている。

18日朝
ビールばっかり飲んでるのは良くないと思い、ちゃんと運動しなきゃなと、ビックカメラまで歩く事にする。んで、駅まで歩くので、せっかくだからとジュンク堂に行く。コミックのコーナーに行くが、県内で唯一の品揃えを誇っていたアメコミのコーナーが縮小されてた!!ファック!死ね!それどころか『ウォッチメン』も置いてない!売り切れたのか?それにしても日本においてのアメコミの扱いはホントに酷過ぎる。まぁ、でも高過ぎるというのもあるかもしれない。『ウォッチメン』だって、今回復刊されたヤツは3570円だ。マンガ一冊に3570円はさすがに出せないか。普通の感覚としてどうなんだろう。いわゆる大人買いってヤツになるんですよね。

棚を眺めていたら、手塚治虫の伝説のマンガである『新宝島』の完全復刻版の『新寳島』が普通に売られていた!

完全復刻版 新寶島

完全復刻版 新寶島

http://shogakukan-cr.jp/shintakarajima/index.html←特設サイト。

さて、この復刻版の『新寳島』は192ページで、なんと2000円もする。しかも完全限定版は『新寳島』の元になってる『オヤヂの宝島』と『タカラジマ』も収録で7980円。Amazonランキングで予約の上位に一気に行ったらしいが、普通の人の感覚だったら、リメイク版が560円で売られているわけで、それよりも古いマンガに2000円って!って思うかもしれない。というか、実際私も本屋で手に取った時、高いなぁと思ったくらいだから。

まぁ、それでも速攻でレジに持って行ったよね。まぁ、それにしても、アメコミしかり、今回の『新寳島』しかり、かなり高価なマンガなんだが、普通マンガ一冊の限界っていくらなんだろう。

話を戻すと、私はリメイク版しか読んだ事がないのだが、それもそのはずで、戦後直後のマンガで紙の質が相当悪く、現存する『新寳島』は少ないと言われている。まんだらけが500万円で買ったとか、松本零士が数少ない初版を持ってるとか噂もいろいろあるが、この間もヤフオクに出品され、67万円で落札されるなど、とにかく『新寳島』は62年の時を経ても話題を振りまいている。

『新寳島』がなんで未だに語り継がれてるかというのはいくつか理由がある。

・40万部も売り上げ、戦後のストーリー漫画の原点と言われながらも、原画がない為、現存してる数がとにかく少ない。
手塚治虫が復刊を許さず、自身で全部書き直して『新宝島』にしてしまった。
・手塚作品の中で唯一の共作なので、完全な手塚作品とは言えず、それが復刊を許さなかった原因じゃないかと言われている。
・構成:酒井、作画:手塚というクレジットだが、実際はどのように作業が進められて行ったのかが、不明。
藤子不二雄赤塚不二夫石ノ森章太郎というビッグネームが漫画家を志すきっかけになったと公言している。

ものすごいショック受けましてね、マンガでこういう世界を表現出来るならっていうのを感じたのね、小学校6年生だったんだけど、よし!オレも漫画家になろうって思いましたよね。手塚治虫以外は漫画家じゃないと思って、マンガの神様になっちゃったの

赤塚不二夫

当時戦後直後でマンガに英語のタイトルが入ってるっていうのが、まずビックリしたんですよね、それでこう開いたらね、単行本のマンガなのに中に目次が出てる訳ですよ、そんなマンガにね、目次の出てる単行本なんて未だかつて見た事が無い。オープンカーに乗って、バーっと手前にズームで来て、それから今度あっち側にですねバーっと去って行って、それからとにかく港に着くまで一言もセリフがないわけですよね、これはもうまさにね、僕ら見たとき、紙の上に書かれた映画だと思ったんですよ
藤子不二雄A

手塚マンガの研究者もやっぱり『新寳島』は最重要作と考えていて、『新寳島』の研究本も出たくらい、謎に包まれているが、その謎が今日全て明らかに!!

あと、ダシール・ハメットの『血の収穫』も買った。こちらは『用心棒』や『ミラーズ・クロッシング』に影響を与えたハードボイルド小説。有名過ぎるくらい、有名なのにもかかわらず、ジュンク堂以外置いてないってあり得ないだろ!

18日昼
ビッグカメラに行く。広い。でも、印象はそれだけ。安かったけど、帰りにミスドに寄ってコーヒーを飲んだ。

15時過ぎに彼女が来る。しりあがり寿の『弥次喜多 in DEEP』を借りた。一巻からどんどん太くなっていき、背表紙の弥次喜多もどんどん太って行くというおもしろいもの、そうだよ、ブックデザインは祖父江慎だよ。

18日夜
大戸屋に行って、牛鍋定食を喰らい、『新寳島』を読む。リメイク版では劇的だったオープニングもオリジナル版ではかなり簡潔に描かれた事が分かったし、何よりも、マンガ的な効果の無さは異常だ。セリフが少ないのは分かってたが、擬音もほとんど使われていない。セリフも擬音も無く、映画的なカット割りで魅せると言えば、大友克洋の『童夢』が思いつくが、手塚をリスペクトするのは、この辺に原点があるのかもしれない。もちろん大友克洋もリメイク版から入った人だと思うのだが。

私は手塚治虫の初期の完成されてない冒険物が好きだが、ぶっちゃけ62年前のマンガだから「古いんだろうなぁ」とは思っていた。「当時はマンガの黎明期だったから、斬新に感じたんだろう」と予想していたのだが、ところが読んでみると思いのほかおもしろくて驚く。戦前、戦後の『バットマン』も同じように擬音も無ければマンガ的な表現も少ないのだが、決定的に違うのは、手塚治虫の絵は非常に奥行きがあって、映画的で、アクションがかっこいいというところ。そして息も吐かせぬ展開、これぞ冒険活劇だと言わんばかりにいろんなものを盛り込み、その辺も手塚治虫は気に入らなかったらしいのだが、今読むと、世界のありったけの冒険物を凝縮した児童文学という印象がある。

つっても、伝説化したマンガだっただけに過大評価なのかもしれないが、個人的は値段の事もあって、かなり思い入れが強い本になりそうだ。

明日は『奇子』を久しぶりに読むぞ。あういぇ。

新宝島 (手塚治虫漫画全集)

新宝島 (手塚治虫漫画全集)

手塚治虫の「新宝島」その伝説と真実

手塚治虫の「新宝島」その伝説と真実

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

ちなみに赤塚、藤子、両者の発言は、世界ふしぎ発見手塚治虫特集より引用しました。