弥次喜多 in DEEP

18日朝

妹とマンガの話を1時間くらいする。ちなみに私はギャグマンガがすごく好きなのだけれど、世間で人気が高い『行け!稲中卓球部』や、シュールをメインストリームに押し上げたうすた京介は実はそこまで好きではない。特にうすた京介は『ピューと吹く!ジャガー』がとんでもなく売れてるけど、「そこまで言うほどかなぁ」って思うし、逆に「マサルさんが霞んで見えるほどの傑作!」と思った『武士沢レシーブ』は打ち切りになったりで、やっぱり世間とのズレを感じる。確かにうすた京介以降、シュールなギャグマンガが市民権を得た気がする。『ボボボーボ・ボーボボ』なんかもそうなんだと思うけど、私の中では悪しき風潮だなぁと思っていて、同時期に連載していた木多康昭の方が断然好きだった。つーか、ホントにみんな好きだよねぇ、『ピューと吹く!ジャガー

んで、そういう話をしたら妹も「私、うすた京介ダメ。ぶっちゃけ『マサルさん』からダメ。」と言ってたんで安心した。

家中にある手塚治虫のマンガを一堂に集めるという作業をする。

その後、彼女から借りた『弥次喜多 in DEEP』の1、2、3巻を読むが、、、

弥次喜多 in DEEP 廉価版 (1) (ビームコミックス)

弥次喜多 in DEEP 廉価版 (1) (ビームコミックス)

これはすごい!こんなすげぇマンガ今まで読んだ事がない!!

ウォッチメン』の時も思ったが、やっぱり世間的に売れてるヤツよりも、マニアックな人がおもしろいというマンガの方が私に合ってるのかもしれない。

しりあがり寿は『真夜中の水戸黄門』も借りた時に3回読みなおして、自分で買おうと思ったくらいおもしろかったが、『弥次喜多 in DEEP』はそれ以上の傑作。最高傑作と各方面で言われてるが納得だ。映画化された前作の『真夜中の弥次さん喜多さん』はぶっちゃけそんなにおもしろいとは思わなかったのだけれど、『弥次喜多 in DEEP』はホントにホントにおもしろい!

“真っ二つになった喜多さん”とか“けむくじゃらの台風二十七号”とか“大岩を支えるボンドガール”とか“メビウスの城門”など、書いてるそばから意味不明な世界観は健在なのだけれど、突拍子もないギャグと細かいシュールが積み重なってる印象があった前作とは違い、各話に1つだけ大きいシュールを入れた事が大正解で、さらにそれを“人生においての障害”とか“同じ事が繰り返されて行く日々”とか“輪廻”とか“命”とか“天災”とか“宇宙”に置き換えた事で、人が当たり前に考える普遍的な事をマンガ的なストーリーにするというユニークな作品になっている。

意味不明な要素が強かった『真夜中の弥次さん喜多さん』だが、『弥次喜多in DEEP』は“in DEEP”と銘打っておきながらも、ものすごく分かりやすく、ものすごくしりあがり寿の哲学が伝わりやすくなってておもしろい。特に『ヤマモクさん』という回が素晴らしくて、人間が生きる意味と存在の理由を誰も通らない「草の生えてねえとこ」で考え続けるヤマモクさんは観念実在論をベースにしてて好きだ。あれね、「自分が思ってる「ネコ」と別に生物学的な「ネコ」がそれぞれに存在してる」ってヤツね。

第五回手塚治虫文化賞で、『弥次喜多 in DEEP』はあの『バガボンド』と『ONE PIECE』を押しのけて優秀賞を受賞したが、それも納得。マンガの方向性ジャンルはまるっきり違えど『バガボンド』よりも死について重く描かれているし、ストーリーのラインが無い分、作者のイメージを散りばめながら哲学を分かりやすく提示していて、読みながら、いろいろな事を考えさせられる(ちなみに『ONE PIECE』は第一回の読み切りと一巻しか読んだ事がないので、触れられず)

しりあがり寿は『弥次喜多 in DEEP』について、こう言及している。

弥次喜多はいつも悩みながら描いてますぞ。理にかないすぎると納得感はあるもののなんか退屈でチンプになっちゃう。イメージに流されすぎると、「わかんなーい。何いってんのー?つかみどころがないー。腑に落ちないー」となってしまう。そのどちらでもない、見たこともないものが描けたらいいのにね。

まさにこの言葉通り、理屈で書いてる部分と、奔放なイメージが絶妙なバランスで、誰も見た事がないマンガになってた。『ウォッチメン』同様、とにかくマンガを読むのが好きという人も、そうでない人も、ダマされたと思って一度は読む事を絶対的におすすめする。うーん。この人天才。

18日昼
妹と万代書店へ。

赤道の万代書店にある『ゴルゴ13』70冊5000円は未だに売れてないようだ。これはやっぱりオレに買えと言っているのだろうか。

3件古本屋をはしごして、買った物は以下、

珍遊記 不完全版』全巻。
『スポーン』1〜5巻。
『楳図パーフェクション おろち』1巻。
『紙の砦』
『真夜中の水戸黄門
弥次喜多 in DEEP 廉価版』全巻。
『方船』
『ジャガランダ』
『景気ばくはつ。』
『ヒゲのOL薮内笹子』

珍遊記不完全版』は見つけた時によっしゃ!と思ったのだが、彼女に聞いてみると、削除や修正が加えられており、ホントに不完全版になってるらしい。まぁ、いいや、安かったし。『おろち』は楳図パーフェクションで欲しかったので、古本で見つけられてよかった。『紙の砦』は手塚治虫全集よりも安く買えたし、しりあがり寿のマンガは探すと意外とあって、驚いた。

ちなみに妹はプレミア本のコーナーから、『おぼっちゃまくん』を大人買い。1冊800円まで値上がりしてる巻もあったが、さすがにそれは買わなかった。それでも買おうかどうしようか、かなり悩んでいたけど。

18日夜
おぼっちゃまくん』をひたすら読む。子供の頃に死ぬほど読んだが、やはり今読んでもおもしろい。その後、親父と泥酔する。

19日朝
長くなってしまいましたので、これにて。あういぇ。