『バットマン:キリング・ジョーク』を読んだぜ!
16日朝
『バットマン:キリング・ジョーク』の洋書が届いたので、一生懸命読むが、あらすじを紹介してるサイトと照らし合わせて、辞書を駆使したら、意外と分かりやすかった。
まず『キリング・ジョーク』は絵がとにかく素晴らしい。ブライアン・ボラルドの絵はホントに素晴らしく、大友克弘のマンガのようにリアル指向で描き込みもハンパじゃない。さらにぼくが買ったのはカラーリングをやり直したデラックス版らしく、そのカラーリングがCGアニメのようで、出来の良いイラストレーションが1コマ1コマ続いて行く感じで、絵を見てるだけでもまったく飽きない。
『ダークナイト』のジョーカーはこの『キリング・ジョーク』が元になってる事は間違いない。『キリング・ジョーク』のジョーカーは、世の中で起こってる不条理な事は全てジョークであり、それを楽しむしかないというキャラクターで、お前らが持ってる倫理観や秩序や正義も全部ジョークなんだろ?絶望を見せつければダークサイドにあっさり堕ちてしまうんだろ?とゴードンをだしに使い、バットマンにそれを突きつける。
そのやり方というのが凄まじい。アーカムを脱走したジョーカーはゴードンの家を突然訪ねて、娘の下半身を撃ち、裸にひんむいて犯し、それを写真に撮る。さらに一緒に居たゴードンを気絶させ、フリークスが集まる廃墟の遊園地に連れて行く。電気ショックを与える棒でゴードンを目覚めさせ、素っ裸にさせると、お化け屋敷の中を進むトロッコに乗せ、娘が裸になって陵辱された写真をでっかく引き延ばして見せるというハンパじゃない計画。
『キリング・ジョーク』にはジョーカーの過去も出て来て、どうやってジョーカーが生まれたのか?も描かれる。ジョーカーは妻と生まれてくる子供を喰わせるためにコメディアンとして働いているのだが、まったく売れない、売れない事で妻に対しても「お前が慰めたりする事も全部信じられないんだよ」と不信になっている。
彼は生活と妻の為に犯罪に手を染めようとするが、計画の最中に交通事故で奥さんを亡くしてしまう。ここまで来て引き返せないと犯罪を実行に移すが、待ち構えていた警察とバットマンに追われ、仲間を殺され、逃げる途中に毒薬の中に落ち、白い肌と引きつった口と緑の髪を持つ悪魔へと変身する。
全てのモノに絶望したジョーカーはその姿を水面で見て、なんと笑うのだ。頭を抱えながら笑うのである。もう、これは現実じゃない、冗談だろ?と言わんばかりに。
実は『キリング・ジョーク』のジョーカーはバットマンと似た境遇である。バットマンは両親、ジョーカーは妻と子供をそれぞれ亡くして人生に絶望していたキャラなのだ。バットマンは犯罪者を憎み活動するが、そんなバットマンも犯罪行為で悪人を退治している。バットマンも犯罪者なのである。そんなバットマンを見て、ジョーカーはオレとお前は裏表だと言う。ちなみに『ダークナイト』ではジョーカーの過去は明かされないが、『キリング・ジョーク』では逆にバットマンの過去をまったく描いていない。
おもしろいなぁというか、さすがアラン・ムーアだなぁと思ったのは、ゴードンはジョーカーに屈しない。ギリギリで理性を保つ。世の中は全て狂ったジョークだというジョーカーに対して、人間の中にはやっぱり希望が少しはあるんだと思わせる。これは『ウォッチメン』で、クリスタルで出来た宮殿をシルクスペクターが泣きながらぶっ壊すシーンと呼応する(クリスタルで出来た美しいとされる宮殿よりも人間の涙の方が美しい、それは人間だけが持つ奇蹟だとぼくは解釈しているのですが)。さらにジョーカーに情けを見せるバットマンに放つラストのジョークも『キリング・ジョーク』により一層の深みを持たせている。
ホントのホントに一部の有名どころしか読んでないが、バットマンでは『キリング・ジョーク』が最高なんじゃないだろうか。ぼくは群を抜いて好きだ。『バットマン』の監督であるティム・バートンも
「私の中で一番のお気に入りの作品、今までに読んだ中で最初に好きになったコミックが『キリング・ジョーク』だ」
と言っているが、すごくよく分かる。やっぱりアメコミはおもしろい。今年は『フロム・ヘル』の邦訳版も出るみたいなので楽しみだ。あういぇ。

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