変わることを知らない『塊魂』というゲーム

『塊魂』というゲームをご存知だろうか。

バンダイナムコゲームスから発売されているゲームで、世間的にはどうか知らないがぼくの中では『MOTHER』と同じように、特大ヒットを飛ばしてるわけではないのに、熱狂的なファンが多いカルトなゲームという認識である。

『塊魂』だが、このゲーム。近年発売された中ではダントツの出来で、ぼく自身は100満点を差し上げたいのにもかかわらず、周りでゲーマーを自負している人でプレイしてる人が極端に少ない。ただ、プレイ人口は少なめかもしれないが、絶対に人にやらせると「これクセになる！おもしろい！」と言われるので、もっともっと売れて欲しい。ただ、特大ヒットが無いのに新作が出続けるということはある程度コンスタントに売り上げてるということなのだろう。

『塊魂』は雪玉を転がして雪だるまを作るという作業を、部屋や街や宇宙規模で行うゲームである。最初は5cmくらいの塊だが部屋にあるモノ――――例えば、消しゴムや鉛筆やクッキーなどをどんどん巻き込んで行って、塊を大きくする。大きくすると、巻き込めるモノが増え、その大きさはステージにもよるが最終的に3000キロメートルにまでなり、大陸や星まで巻き込めるようになる。

この『塊魂』というゲームはとにかくセンスが良い。動かして楽しいというゲームの本質を捉えながら、若干のお遊びを加え、グラフィックや音楽、説明書に至るまで、コンセプトアルバムのように全てが一つの世界観に向かって統一されていて、ただならぬセンスを感じる。ゲームソフトとしてグッドデザイン賞を受賞したのもなんとなく頷けるところだ。

ただ『塊魂』のどこがおもしろいのか？どこが魅力なのか？というのは実は説明するのが難しい。とりあえずやってみろ！というのも違う気がする。ただぼくが『塊魂』を好きな理由はやっぱり、演出なんじゃないかなぁと思う。

『塊魂』では塊を壊すキャラが出て来たりとか、ものすごいスピードでビームを出して来て、それをかわさなければならないというようなことは一切無い。球の動きもそこまで早いわけではなく、制限時間内でどれだけデカイ塊を作れるかというシンプルなゲームだ。となると、これだけシンプルな内容を飽きさせないためには演出にはかなり工夫がいる。

まず『塊魂』のグラフィックだが、これがすごい。フルポリゴンで描かれた箱庭はリアリズムを追及することなくカクカクしているのだが、そのカクカクしたポリゴンをデザインとして昇華し、ポップに仕上げている。ただ、一つ一つの絵はリアリズムを追及してるわけではないのだが、総合すると、実にうまく日本の街並を写実している。絵はポップでリアルではないのに、街並や家の中などは、絶対にどっかで見たことある風景を映し出す。

音楽も秀逸で、『塊魂』はゲームっぽい音楽は一切使われておらず、サントラがオムニバス盤のようであり、音楽作品としてもクオリティが高い。

そして、グラフィックと音楽にゲームならではの気持ち良さが加わることで、『塊魂』の魅力は加速していく。モノがくっついて行くときの音、塊が大きくなるにつれて見渡せるようになるステージ、そして、巻き込めるモノの量の多さと邪魔が一切ないシステムは、塊を大きくするだけというゲーム性にストレスをまったく与えず、気持ち良さだけが残る。

この様に、グラフィックと音楽がかなり異質な『塊魂』だが、プレイを見てるだけでもすごく気持ちよいので、興味を持った方はこの映像を見ていただければなと、

あと、ぼくが『塊魂』で好きなところは新しい要素を入れないというところ。下手に前作で出来なかったモノを次作に持ち込むと失敗する可能性が高い(特にニンテンドーの作品はその傾向がある)。ところが、PS3で発売されている『塊魂トリビュート』は今までのステージが全部収録されていて、HDに対応しているくらいで、新しい要素はジャンプ出来るようになっただけ。グラフィックもあえてカクカクのポリゴンにこだわっていて、巻き込める量と種類が増えたが、後は真新しい要素は無い。これは好きになったラーメン屋が変わらない味を出し続けてくれるのと似たような印象がある。それ故に批判もあるだろうが、ぼく自身は新しいステージを増やすくらいの感じで、このまま続けて行って欲しい。

というわけで、もしPS3をお持ちの方は、是非『塊魂トリビュート』をプレイしてみてほしい。操作は簡単で音楽もかっこよく、残虐な要素は一つもないので、家族でわいわい言いながら楽しめると思います。あういぇ。

PS.実は映画鑑賞歴よりもゲーム歴の方が長いくせにゲームのことをまったく書かないぼく。ちなみにラーメン屋に7年勤めてたくらいラーメン好きなくせに、ラーメンのこともまったく書いてないな…新潟のおいしいラーメンでもいずれ紹介しよう。