上木彩矢の存在だけが気になる『428〜封鎖された渋谷で〜』
ジェイムズ・エルロイの『ホワイト・ジャズ』を読み始めた。200ページくらいまで読んだのだが、超が付くほどの極悪な刑事が政治的な圧力に翻弄されながら暴れまくるという小説で、削りに削った異様に短いセンテンスと記号のリズムも相まって無茶苦茶おもしろい。
だが、ぼくにしては、4日以上かかって200ページとわりかし遅いペースで読んでしまっている。というのも、昨日妹がPS3のゲーム『428〜封鎖された渋谷で〜』を買って来てしまったからで、それに今、すべての時間をつぎ込んでしまい、思うように読めてないからだ。
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それにしても、この『428』バツグンにおもしろい。シナリオが変化していくというおもしろさは『かまいたちの夜』なのだが、『街』の方を推すぼくとしては、各キャラクターの視点で進んでいく今作は待ちに待っていたという感じだ(『街』だけに)。複雑に絡まり合うザッピングと、計算に計算を重ねたシナリオ。しかもちゃんと小説とは違い、映像で補足出来る分、文章は圧倒的に分かりやすく、これぞサウンドノベルという醍醐味を存分に味あわせてくれる。
文句の付けようはないのだが、しいて言えば、気になったのは上木彩矢だ。
恐らくゲームの制作費のほとんどが上木彩矢関係からなのだろう。上木彩矢が不自然なほど各シナリオに登場し、しかも渋谷を宣伝ジャックしているという設定。キャラクターの着信音から音楽まで、上木彩矢で、その時点で首をかしげるのだが、一番ひどいのが、とあるキャラクターが上木彩矢の大ファンという設定だ。これが笑ってしまうくらい不自然で、そこまでシリアスに来た文脈を一気にぶち壊すくらいの破壊力。演出した人もいやいや付け足したんだろうなぁというのが、小学一年生でも理解出来るほどであった。しまいにゃ、本人まで出て来る始末でタチが悪い。
これは、最近の映画のエンディングテーマにも言える。どういう癒着があるのかは分からないが、映画の内容にまったくあってない曲がかかる時がある。『交渉人 THE MOVIE』なんかホントに笑うしかないくらい、映画とあってないが、ゲームとは言え『428』もその辺を考慮してほしかったかなぁというのはある。映画になるとスポンサーの商品の出し方とかはうまいのだから、その辺もなんとかすべきだと思う。というか、そういうのに頼らなければならないほど、実写を使ったサウンドノベルというのは制作費がかかるものなのだろう。
とは言え、少し実験的な要素が続いたサウンドノベルの中で、やっと正攻法なものが出て来たことは嬉しい。こういうゲームが売れないとまた上木彩矢のようなアーティストがグイグイ出て来てしまうので、それを防ぐためにも是非喰わず嫌いしないでプレイすることをおすすめする。しかもWii版は今安くなってるぜ!あういぇ。
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