『昼顔』がめっちゃおもしろかった件


話題の不倫ドラマ『昼顔』を観たんですがね………

めっちゃおもしれえええええ!!!!!

ある日、夜中の三時に起きちゃって、寝れなかったもんで、第一話をなんとなく観たら止まらなくなり、そのまま昼の12時過ぎまでぶっ通しで観てしまっていた。さすがにちょっと具合が悪くなった。石橋貴明中居正広が夢中で観てると公言しており、テレビでも特集が組まれるなど、かなり話題になっていたようだが、なるほどたしかにこれはマジでおもしろい。みんなして「あーだったよねー、こーだったよねー」って言いたくなる感じがある。

というわけで、ぼくなりに『昼顔』を観てよかったところなどをいくつかあげていく。ネタバレ全開でいくので観ようと思ってる方はなるべく読まないことをおすすめしたい。まぁネタバレしても問題ない作りにはなっているのだが。



上戸彩がとにかく色っぽい

ワイドナショー」にてタレントのYOUが語ってたように、まぁ、とにかく上戸彩が色っぽい。深読み承知で書くが、いきなり棒状のバニラアイスをほおばり、そのアイスが溶けて足にポタっと落ちるとか、やることすべてが何かのメタファーな気がしてならない。設定上は色気のない普通のパートさんなのだが、仮にも演じているのが上戸彩なのですべてがかわいく艶かしく映ってしまうのだ。ぶっちゃけ斉藤工上戸彩に惹かれる理由がこまかく描かれず、最後の最後まで奥さん役の伊藤歩に「なんであんな子がよかったの?」とつっこまれるが、よくよく考えたら不倫の相手はあの上戸彩なのである。設定はそうであっても上戸彩が演じることによって上戸彩として画面では輝くため、充分な理由になるのである。


吉瀬美智子のいうことにいちいち説得力がある

このドラマはハッキリいうと不倫版の『ダークナイト』であり。吉瀬美智子はジョーカー的な存在で、上戸彩の倫理観を揺さぶりながら不倫をするようにけしかけてくる*1。これといったパンチラインがないにもかかわらず、発することばのすべてが名台詞なんじゃないかというくらいかっこいいので、それが妙に印象にのこる。物語の構成も素晴らしいが、こういったセリフを生み出す脚本家の能力も評価されるべきかもしれない。



不倫のドラマなのにラブストーリーではない

このドラマの何がおもしろいって、不倫して結ばれたふたりが愛し合い……という話ではなく「その不倫!バレるの!?バレないの!?」というサスペンスになっているところだ。タランティーノが『レザボア』を撮ったとき、観客を引き込むストーリーの作り方として「観客が登場人物の誰よりも情報をつかんでいて、クライマックスを迎える頃にストーリーが観客の情報に追いつくくらいがいい」と言っていたが*2、まさにそういう感じで、三組の夫婦のそれぞれの心情や誰がどこまでを把握してるのかについては観客が一番よく知っているため、ちょっとしたキャラクターの行動や言動にいちいちハラハラしてしまう。しかも各々の不倫の様子がカットバックで同時に描かれたりするので、そのハラハラ度は二倍にも三倍にも膨らんでいく。だからこのドラマは不倫しているとき“以外”の描写が細かく、ふたりでいるときなどのシーンはかなり短めに設定されていて「こういう恋愛の話はどうもなー」と思ってる人にもおすすめできるのである。ちなみに映像面もクレーンショットだったり、キューブリックよろしくステディカムのようなもので主人公が歩くところを後ろから追っかけたりと、妙に映画的であったりする。



不倫のドラマなのにドロドロしてない

もちろん後半にいくにつれて修羅場になっていくわけだが、昼ドラ的なドロドロしたような展開はひとつもなく、ある程度の報復はあるにしても「あんたー!絶対に殺してやるわよー!キエー!」というような陰惨なやりとりがほとんどないのが特徴。「バレるか!?バレないか!?」がおもしろさのキモなので、意外とバレてからのなにがしは深く描かれない。なのでちょうど不倫がバレる9話くらいまでがおもしろさのピークであるともいえるが、ここまで来てしまうと感情移入もハンパないので、そのいきおいで最後まで観てしまう。



最終回が逆に新鮮

この手の不倫ドラマは「不倫する人が真実の愛を見つけた」的な描かれ方をするわけで、10話になると『失楽園』や『浮雲』のような展開になるわけだが、ジェットコースターのようなスピードでテンション高く進んでいくのとは裏腹に、最終回は劇場版『エヴァ』の如く、盛り上がった観客に対して「目ぇさませよ!」と冷水をぶっかけてくる。まるでそれは「不倫なんかに溺れるなよ!」と観客にクギをさすような感じで、ホントになんの盛り上がりもなく、とてつもなくドライに幕が下りる。「あれだけ盛り上げといて!」と不満を持った人も多いだろうが、同じように「目が覚めました。今まで毎週楽しみにしていた時間が無駄に思えるくらいに」という感想を書いてる人もいた。いちばん驚いたのは金持ちの妻である吉瀬と仕事ができる女の夫である斉藤工はそれぞれの生活に戻り、上戸彩だけが離婚して、ひとりぼっちになるという残酷な展開。それはまるで現実のほうがハッピーエンドなんじゃないのかというくらいである(離婚して結ばれる人だって少なくないはず)。



というわけでネタバレ全開で書いてしまったが、この他にも見所は満載で、特に不倫慣れしてるはずの吉瀬美智子がピンチを迎えるシーンは心臓が止まってしまうんじゃないかというくらいハラハラすること必至。不倫がバレるか!?バレないか!?が主軸のために、恋愛モノとして見るとやっぱり主人公たちが惹かれていく動機が弱いし、そもそもキャラクターたちの脇が甘すぎるというか「なんでそのタイミングでそんなことするかなー」と首をかしげてしまうところも多々ある。しかし、それを補って余あるおもしろさがこのドラマにはあるので、是非、主婦以外の…………特に男性の方には観てもらいたいところだ。間違いなく誰もが「不倫はよくない!」と思うだろう。

*1:不倫とはよくいったものだ

*2:クエンティン・タランティーノの肖像」より