『マラドロワ』以来12年ぶりの傑作/Weezer『Everything Will Be Alright In the End』

Weezerの新作である『Everything Will Be Alright In the End』を聴いた。

このアルバムがリリースされた記念なのか、あるサイトでWeezerの歴代アルバムランクが発表された。大概は「的外れだわー」とパソコンの画面にむかって文句をいうわけだが、珍しくこの手のものでは完全同意である。ただ失敗作といわれて売り上げもガクっと落ち込んだ『ピンカートン』を最初に評価したのは日本だということは強く主張しておきたい。

ウィーザーの歴代アルバムを米サイトConsequence of Soundがランク付け - amass


さて、Weezerといえば『マラドロワ』以降、新作が出るたびに日本盤の帯に“傑作”という文字が出てくるイメージがあって、ファンはそれに毎回躍らされるというのが通例であった。それもこれもファースト/セカンドがロック史に残るような名盤だったからである。「そんなバカな」と思いつつ期待してしまうというのは人間の心理であり、それをうまくくすぐられて「今度こそホントに傑作なのではないか?」とついCDショップに足を運んでしまうのだ。

実際、音楽雑誌でも出すたびに「“グリーン”のラインまでは行ってる」「“マラドロワ”クラスの……」といった思わせぶりな文章が並ぶ。今回もご他聞に漏れず「デビュー当時のサウンドを2014年バージョンで表しており、まさにウィーザーの最も完成度の高く、感動的な作品になっている」と書かれていて思わず笑ってしまった。ところがオリジナルアルバムとしては前作にあたる『Hurley』も同じように「原点回帰の会心作!」と書かれてたり、5枚目の『Make Believe』にも「迷走という悶々期を通り過ぎて、ここに堂々帰還した」というレビューがあったり、6枚目の『Weezer (Red Album)』では「新旧ファン全てが納得の名盤!」など、毎回“原点回帰”して毎回“傑作”なのである。ボジョレー・ヌーヴォーかっ!

しかし、今回はそのことばに偽りなし。Weezerとしては『マラドロワ』以来、12年ぶりのまぎれもない“傑作”であると断言していい*1。それもそのはずで今作はWeezerのアルバムの二曲目くらいに入ってる*2「らしさ」全開の曲がアルバム全編に散りばめられているからだ。

Buddy Holly”や“Photograph”とまではいかないが“Ruling Me”、“I'm Your Daddy”、“Pork and Beans”レベルの曲が10曲並ぶ*3、ある種、開き直ったつくりである。もうわけわからんロック・プログレや心撃ち抜くようなバラード、あえて変化球を狙ったインドテイストみたいなのは一切なし。分厚いパワーコードをかき鳴らすド直球のパワーポップアルバムになっていて、それこそ『グリーン・アルバム』と『マラドロワ』の中間くらいの印象を受ける。

もちろん狙って作ってるだけに似たような曲が続くのも事実だが「丸々一枚のアルバムを聴いてもらえない時代」と本人が言ってるように、単純にWeezerらしい良い曲を10曲入れてみた、それだけのことである。ヘタに後半失速するアルバムが多かっただけにこういうのを待ってたという人もいるのではないだろうか。ホントに捨て曲が一切ないのでアルバム一枚の完成度でいえば先ほどのサイトの通り『グリーン・アルバム』の上をいくといってもいいだろう。

というわけで、いままで「今度こそは!」と思いながらもダマされて見限ってしまったファンはおろか、Weezerなんて知らんわという人にも自信を持っておすすめできる良いアルバム。今年はレンタルズも新譜を出したので、それも買ってしまおうかなと思ってるくらいによかった。大満足。

エブリシング・ウィル・ビー・オールライト・イン・ジ・エンド

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ロスト・イン・アルファヴィル CD

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*1:それまでのも悪くはないが……

*2:「グリーンアルバム」以降から顕著

*3:最後にアンコール的に3曲小品が入っているが