『ノルウェイの森』を10年ぶりに読んだ

映画公開に合わせて『ノルウェイの森』を10年ぶりくらいに読み返しました。

あらすじをホントにざっと書くと、主人公ワタナベくんの親友キズキくんが自殺しちゃって、その後にキズキくんの彼女であった直子とワタナベくんがセックスしちゃってさあたいへんという話。

10年前に読んだときは正直分からなかったんですよ。性描写がリアルというか、そこにあるものとして描かれてる気がして、エッジの効いた感じが妙に印象に残ってるというか、人を愛することを知らないワタナベの感覚がその冷たく突き放したようなセックス描写から溢れてるなぁとか思ってたんです。

んで、それ以外はちっとも覚えてないという(笑)

なんか人里離れた山奥に隔離されてとかそんなボヤーっとした印象しかないですね。あとは文章かっこいいなとか『ラバー・ソウル』聞きたくなるなとか。

今回読み返して思ったのは、なかなか男が身につまされる小説だなということですね。いや、だってね、「なんで男の人は愛してもない人とセックス出来るのよ!」的なことをガツーンと言われますからね。頭抱えてうわー!ですよ。ごめんなさーい、はふんはふん。

あいかわらず文章かっこいいなぁと思ったんですけど、小説自体は完成されたものではないと思うんですよ。『羊をめぐる冒険』とか『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に比べるとしっかりした構成じゃないというか。でも、その完成されてない感じが、登場人物たちの不安定な精神状態を表してると思うんですね。

登場人物も大凡普段の生活で喋るような言葉使いじゃないですからね。さらにそのことを他のキャラクターに「あんたって喋りかた変よね」とか言わせたりしてます。でもあの喋りかたにはちょっと憧れるかもしれません。基本ワタナベはいけすかないやろーなんですが、持ってるレコードや愛聴してるものにはすごく共感を持ってしまい。結果、オレはワタナベと友達になれるかもしれんという結論にたどり着きました。

あと『ノルウェイの森』って、夏目漱石の『こころ』でもあって、武者小路実篤の『友情』でもあるんだなと。

似てるっていうか、微妙に違うんだけど、この二つをシャッフルして、いろんなところ変えてる感じがするわけですよ。69年という舞台設定や性描写、中盤から後半の施設でのくだりに目を奪われがちなんですけど、本筋的なものは結構似てると思うんですよね。

村上春樹自身は海外文学から影響を受けてますから、そっち方面に元ネタみたいなものが隠されてるとも思うんですが、『こころ』も『友情』も日本を代表する小説ですからねぇ。それに似た設定の『ノルウェイの森』が特大ヒットになるとはなんか妙な因果を感じますね。日本人ってこういう話が心底好きなのかなと思ってしまいます。

ちなみに『ノルウェイの森』の発行部数を抜いた『世界の中心で、愛をさけぶ』ですが、この作者の『きみの知らないところで世界は動く』はこれまた『ノルウェイの森』に似てるんですよね。ニールヤングの『ハーヴェスト』が出て来たり、ラジオからビートルズが流れたりして、そのへんの時代設定も含めてかなり『ノルウェイの森』の影響が出てると思います。

さらにいうと『きみの知らない〜』と『セカチュウ』はすごく似てるんですよ。だから『セカチュウ』が『ノルウェイの森』を抜いて発行部数一位になったのもこれまた何か因果的なものを感じるんですねぇ。

まぁ、だからと言って『セカチュウ』と『こころ』はちっとも似てないですけどね。さすがに派生しすぎると元のものとは違うものになりますわな。

いま映画館に行くと、『ノルウェイの森』の冊子みたいなものが置いてあって、それに各メディアの評価がすでに載ってるんですよね。それによると結構評価が良くて、楽しみになって来ましたよ。なんつっても音楽はレディオヘッドジョニー・グリーンウッドだからな!ヤツがてがけた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のサントラは神だ!あういぇ。

今日は昼から『エクスペンダブルズ』観るぞー。

関連エントリ

ノルウェイの森』に出て来る楽曲を中心に架空コンピを作ったという記事。これはすげぇ!
http://blog.livedoor.jp/cheaphappy/archives/809094.html

ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラック

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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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