まゆゆは正統派アイドルなのか?問題


作家で脚本家の中沢健さんが『宇野常寛氏の「まゆゆ(渡辺麻友)1位は予定調和」発言に反論する』という動画をあげていた。

宇野常寛氏の「まゆゆ1位は予定調和」発言に反論する。 | 歩く雑誌・月刊中沢健のブログ

ざっくり書くと宇野さんは「正統派/優等生アイドルであるまゆゆが一位になるのは予定調和でおもしろくない」と各メディアで言っていて、それに対して中沢さんが「実はまゆゆは正統派アイドルではない、一位になりにくいタイプのアイドルだからこそ予定調和を壊したのでは?」という意見をぶつけている。

これを聞いてぼくがまず思ったのは*1まゆゆは確かに正統派アイドルではない、だが正統派アイドルとして生まれ変わったのでは?」ということだ。

中沢さんのいうことはすごくよくわかる。むしろそれに反論するつもりはない。今では考えられないが、次世代エースとして扱われてるまゆゆ秋葉原を象徴するような元ひきこもりのアニヲタ/ドルヲタで、ツインテールをトレードマークにし、二次元から飛び出してきたようなロリキャラだった。数年前まではその側面を存分に出し、まゆゆとしての個性を発揮していて、それはそのまんまでんぱ組inc.に受け継がれることになるが、AKBを追いかけてきた人でさえまゆゆがそういうキャラだったことを忘れかけてたのではないだろうか?ぼくがそうであるように。

実際、対抗馬だったさしこ(指原莉乃)が良い例である。実はさしこはメディアに出始めた頃はヘタレキャラとしてメンバーからいじられており、それこそ内々のイベントである「ホーム」では力を発揮するものの、普通のバラエティ番組のような「アウェイ」では何一つできない本来の意味の「ポンコツ」アイドルで『さしこのくせに』を見れば分かるが、指原莉乃というアイドルはAKBに入ってなかったらいったいどういう人生を歩んでいたのだろうか?と真剣に考えさせられるほどのボンクラ少女だったのである。しかも総選挙では「かわいくないし、歌もヘタだし」と自らスピーチしている。

それがいまやスキャンダルを乗り越え、いいともの最終回を見届けたレギュラーのひとりになり、バラエティでは裏回しとしてひな壇を取りまとめ、あげくHKTではプロデューサーの役目を果たし、各メンバーのMCまで細かくチェックして「これは言っちゃだめ、これは言っていい」と指導している始末(ぱるるに「がんばりなさい」とメールを打っただけでボロカスいわれたあのさしこが!である)。

今回の総選挙で二位だったさしこはハッキリ「二位で悔しい」と公言したが、これも今までのさしこだったらありえないことである。むしろ去年まではさしこが一位で笑える総選挙とまでいわれており、こういうことを数年前にもし言っていたら「お前ごときが調子に乗るな」とファンですら叩いたであろう。今年はそういったことをいわせないようなオーラと圧倒的な評価があったように思う。

まゆゆがそうであるように実はさしこのヘタレキャラもとっくに忘れ去られているのだ。

そのことを鑑みるとまゆゆも実はぼくらの知ってるまゆゆではなくなっていて、優等生アイドルを演じてるのではなく、むしろそれを自覚しはじめたのではないかなと思う。メディアでどう扱っていいかわからないまゆゆもさしこと同じようにベクトルは違えどアイドルとして成長しているのではないかなと。

宇野さんの「まゆゆ1位は予定調和」ということばには「運営からゴリ推しされていない、純粋なファンの力で一位になったさしこはやはり民意の象徴であり、ここでまゆゆ個人が頑張っていたとしても運営にゴリ推しされてるアイドルを改めて応援していいのか?」というようなニュアンスがあったと思う。だからぼくはこの宇野さんの意見にはわりと賛成というか、理解できる。

ただ、それでも、ぼくの純粋な感想をいうと、今回はさしこが一位になろうが、まゆゆが一位になろうが、どっちにしろ予定調和感はあったと思う。それはつまり、どっちが一位になっても「まぁそうなるだろうね」という予測範囲内のことであって、こっちの度肝を抜くようなサプライズは今年は生まれない、むしろ生まれにくいのかなと。

ぼくはAKBにいちばんおもしろさを感じるのは「サプライズ」だ。サプライズがAKBを象徴するもののひとつと考えるならば、去年のさしこのように「ここからこの人がくる!?」みたいな驚きがあってこその総選挙だと考えている。だからぼくは支店がそこで一位をかっさらったらおもしろいことになるし、それこそ「らしい」総選挙になるのではないかと思った。

それでも二年前のさしこの順位や票数を考えるといきなりそういうことになるとは考えにくい。だからこそさしこが一位か?まゆゆが一位か?の勝負になり、そこでこの総選挙が論じられるのも当然だなというのもよくわかる。そのへんも全部ふまえたうえでぼくは「どっちが一位になっても予定調和だ」と思うのであった。



【ここからは総選挙総括】

今年の総選挙はオールマン・ブラザーズ・バンドの『ブラザーズ・アンド・シスターズ』のように「あれだけの悲劇があり、さらにメインどころのメンバーが抜けたにも関わらず、出来上がったのは地味ながらまぎれもない名盤」って感じで、サプライズもパンチラインも少なく、全体的にスピーチも長めながら、今までのなかでいちばん楽しめた。前回が『アウトレイジ』だとするならば今回は『アウトレイジ・ビヨンド』といった具合で、派手さはないが見所満載だったように思う。

須田、宮脇、生駒、柴田のランキングも「運営の思惑通りにはいかない/させない」という古参ヲタの気概と新規ヲタの勢いを感じたし、あとは松村香織が速報からガクっと下がったのも「AKBは甘くない」という証明だったように思うし、渡辺美優紀の順位は完全にスキャンダルの影響が反映された証拠だろう(おもしろいなと思ったのは同じ釣り師であるだーすーがみるきーの代わりといわんばかりに順位をスコーンと上げてきたこと)。あとはいままで上位にいた人が世代交代といわんばかりに20位、30位近くも順位を落してるのが印象的だった。

ハッキリいうと上位がどうのこうのよりもこういった7位以下の攻防の方がハラハラした。それはそれでAKBらしいともいえるが、これが一般層に届いてないのはちょっともったいないかなぁとも思ったりした。まぁ興味ない人にとってはどうでもいいことだといえるが。

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*1:宇野氏のほうは総選挙前の特番、総選挙後のANNを動画で