ギムレットにはまだ早い

『長いお別れ』を一気に読む。この作品は500ページあるんだけど、映画版と最初の200ページはほとんど一緒なんですよ。だから、そこで止まってたわけなんだけど、オフ会でhackerさんに「映画と原作は全然違うから早く読んでみな」と言われまして、とりあえず読んでみた。もうこれがすごくおもしろくて、残り300ページは映画とはまったく違う展開を見せるの!アルトマンがどのくらい変えたかもわかったしね。

また本は本でめちゃくちゃおもしろいし、映画は映画で独立しておもしろい。私、あんまり本を読んでる方じゃないけど、今まで読んだ本の中で一番好きかもしれん。こんなに洗練という言葉が似合う本も珍しいだろう。多分、これからも何回か読むんじゃないだろうか。展開がとにかくすごくて。登場人物が複雑に絡み合うストーリーなのに、交通整理されてて、読みづらいという事がない。

バシバシ伏線を張りまくり、それがどんどん解かれていく快感は、サスペンス性豊かだし。ミステリーのようにトリックがあるわけでもないのに、あっと驚く展開になっていく、出てくる人間の描き分けもすごい、しかも一人称であるのにもかかわらず、その本の中にさまざまな人格があるようだ、そして、その誰もが人間として欠落している何かをかかえている。それも含めて人間なんだという事がメインのテーマである。そして主人公のフィリップマーロウである。とにかくかっこいい。人間としての感情がすごく薄い人物。だからハードボイルドは乾いた文体とか冷たいとか言われるのだろう。フィリップマーロウという人物は常に我慢している。男として我慢する所を知っているようだ。男として我慢しなくてはならないというのを見たのは『リオブラボー』以来だ。うん、やっぱしかっこいいな。

皮肉屋で頭が良く、誰とも深い付き合いをしないからこそ、すべてを冷静に見れる。すべてのシーンが映画的で、名台詞も連発。後半の70ページ目に事件の全容が明らかになり、ラスト8ページの展開は鳥肌が立ちまくりで、『ギムレットにはまだ早い』にはホントに参った、思わず声出たもん。

いやぁ面白かったなぁ、こんなに面白くていいのかよ!レイモンドチャンドラーすごいなぁ。読んでるそばから頭の中にどんどん情景が浮かぶんすよね。1つ気になったのは、何故ジンライムをシェイクするとギムレットになるんだろう、ほぼ一緒ですやん。