『深夜食堂』と吉田類

深夜食堂』という漫画が好きである。

深夜食堂 1 (1) (ビッグコミックススペシャル)

深夜食堂 1 (1) (ビッグコミックススペシャル)

深夜から朝までしか営業してない食堂にやってくる人々とマスターとの交流を描いた作品で、家族でもなければ、友人でもない、「深夜食堂に集まって来る客同士」という、その場限りの関係性をうまーく描いている。パッと見、山田洋次の世界を彷彿とさせるかもしれないが、あまり深入りしないけど友人たちよりも腹を割ってるかもしれないという意味で、『深夜食堂』はジム・ジャームッシュのテイストにものすごく近い。

深夜食堂』は去年ドラマ化されたのだが、そのタイトル通り深夜からの放送で、新潟ではやっておらず、DVD化するのを心待ちにしている。かなりドラマも評判が良いらしい。

意外に思われるかもしれないが、ぼくはアメコミを好む一方で、『THE3名様』とか『よつばと!』とか『聖☆おにいさん』みたいなゆるーい漫画も好きだ。『深夜食堂』も深夜にしか営業してない食堂というかなり限られた人しかやってこないところでの悲喜こもごもが淡々と綴られてるだけである。

さて、こないだ、仕事から帰って来たら、親父が不思議なテレビ番組を見ていた。内容は居酒屋に行って、酒をたしなみながら、店の常連さんや店長さんと不思議な交流をするという、まさに『深夜食堂』の実写版という趣。居酒屋を紹介するので、グルメ番組というジャンルになるのかもしれないが、今まで見て来たグルメ番組とも雰囲気が違っていて、その緩さから一発で気に入ってしまった。

調べたら、それは『吉田類の酒場放浪記』という番組であった。

もう本放送は終わってるのだが、『水曜どうでしょう』のようにBS-iで再放送しているようだ。かなりコアなファンが多いのか、再放送だけに留まらず書籍やDVDまで販売されてるってんだから驚く。

ただ、これがDVD化されるというのはよく分かる。とてもおもしろい、不思議な番組だ。雰囲気としては『タモリ倶楽部』にも近いが、吉田類さんという人はタモリ倶楽部にも出たことがあるらしい。

言えば、リーズナブルな居酒屋を紹介するだけの番組なのだが、この吉田類という人が曲者で、この人じゃなければ多分番組は成立していないはずだ。

基本的に、番組では、出された酒を淡々と飲み、出て来る肴に対しても「まいうー」とか「宝石箱や〜」なんてことは一切言わず、「うん」とか「ほほぉ」とかしか言わない。『舟唄』のようにしみじみ飲めば、しみじみとという感じで、一見地味なのだが、それがとてもうまそうで、グイグイ引き込まれる。演技で言えば笠智衆のような味わい深い雰囲気だ。

しかも、酒を飲んでいるので、番組の後半になると明らかに酔っぱらっているのだが、その酔ってきたのを見るのも楽しい。15分の番組なのだが、今はそれを毎週月曜日の21時から4本、1時間で放送している。

基本的にぼくはお酒も死ぬほど好きだし、おっさんに対する憧れみたいなものがあって、そういう意味でも、吉田類さんはかっこよかった。というわけで、酒を飲みながらごゆるりと見るにはちょうどいい番組『吉田類の酒場放浪記』はおすすめです。あと『深夜食堂』もね、早くドラマ版のDVDレンタルされないかなぁ、あういぇ。

吉田類の酒場放浪記

吉田類の酒場放浪記