『陽気なギャングが地球を回す』と大雪

布団のスキマにまで冷気が入り込んでるような感覚が全身を襲って、朝の7時半に目が覚めた。キンキンに冷えた部屋のカーテンを開けて、外を覗き込むと別の国なのかと思うほどに雪が積もっていた。見える視界の半分以上が雪だ。今までの人生で一番積もったなと思っていたら、どうやら新潟では昭和58年以来の積雪量だという、なるほど、ぼくの生まれた年以来ならば、そりゃ人生で一番積もったと思うわけだ。

こんなに積もってたら車も出せないということで、朝から『デス・プルーフ』をDVDで観たあとに、『陽気なギャングが地球を回す』を読んだ。

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

賛否両論あるだろうなぁとは思いつつもじぶんはおもいっきり気に入った。なんつーか、スタイリッシュっつーかスマートな作品で、むちゃくちゃ上品にまとまってるのだけれど、ごちゃごちゃしすぎてないというか、それこそギャングが出てるのに、スマートなガイ・リッチー作品を思わせる。調べたら『オーシャンズ11』を意識してるんだそーだ。なるほど、なるほど。死体は出るのに血は吹き出さないとか、極悪人が極悪人らしい行動をしていないとか、もっと踏み込めばいいのに!とか思うところもあるが、この作品が特出してる部分はやはり会話だ。

超能力にも似た特殊な力を持つ4人が銀行強盗をするという話なのだが、タランティーノ作品よろしく、登場人物は本筋に関係ない話をぺちゃくちゃと話し続ける。これがとてもおもしろかった。ちょっと知的な要素もあって、鼻に付くところもあるが、これは好き嫌い関係なく評価すべき点だと思った。クドカン村上春樹、それこそ元になってるタランティーノとも違う独特の会話で、これをずっと読んでいたいなという気にさせられた。

個性豊かなキャラクターもわんさか登場し、基本的に主要の4人に目がいくと思うが、ぼくが一番気に入ったのは盗聴やハッキング、合鍵作りを得意とする田中というキャラだ。仕事はキチッとこなすが、仕事の値段は決まっておらず、毎回バラバラ。ごちゃごちゃしてるように見せかけて完璧に整理された部屋、スナック菓子をごちそうのように平らげ、毎回得体の知れない道具を売りつけて来る。物語のキーになってるのだが、こういうキャラクターを造形出来るのはすごい才能だと素直に思った。『ゴールデンスランバー』も主要のキャラよりも脇役がおもしろかったし。

しかも『陽気なギャングが地球を回す』は回想や視点の切り替えがすごく分かりやすく、交通整理された構成になっていて、とても読みやすい。かっこ良過ぎるだろ!と文句も言いたくなるくらいシュッとした出で立ちのイケメンな小説。いい子が書いたようなギャングのお話だけど、ぼくはおもしろかった。会話が鼻に付かなければ、ノレます。おすすめ。

読み終わって、14時くらいから雪かき開始。体を温めるためにバーボンを流し込む。したら車の雪を払う道具が壊れていて、指を挟んでしまった。

これはつぶさない方がいいのだろうか。ま、とにかく山形と新潟はすごい雪らしい。明日深夜まで仕事だ、帰る時に雪降ってなきゃいいが……あういぇ。