愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです

2009年の本屋大賞を受賞した『告白』を読んだ。

告白

告白

あまりの寒さに石油ストーブの前から動かないという究極の出不精。昨日は戸梶圭太の『なぎらツイスター』と『溺れる魚』をもう一度読んだ。一度読んだ本をもう一回読むと、前よりも早いスピードで読み終わる気がするのだが、気のせいなのだろうか。それともブログを書き初めてから読むのが早くなったのか。

そんなことよりも『告白』がすさまじかった。現代版『氷点』と言っても差し支えないくらいすさまじい戦慄の復讐劇だった。

冒頭、ある女教師がもったいぶってダラダラと生徒の前でお別れの挨拶をしている。その女はその日で教師を退職するという。あまりに長い話なため、「やばいモノを読んでしまったなぁ…」と激しく後悔したのだが、実はこれが前フリで、その話を聞いて、いろんな感じ方をする人の気持ちまで計算にいれた構成となっている。

「もったいぶった話し方しやがって」と思う人もいれば、「先が気になるから、早く話して」と思う人もいるだろう。あるキャラクターの心情では「ゆっくりと首を絞められてるようだ」ともなり、その視点の違いがそのまんま物語の視点となってるような気がした。

ストーリーは生徒に娘を殺された教師の復讐である。教師、娘を殺した犯人、犯人の親の視点で物語はすすんでいく。最後の最後に反吐が出そうな説教とイライラする聖人の思想が入り、本を投げつけてやろうかと思ったが、最後の数ページでそれすらも前フリだったことに驚かされた。ラストは大拍手である。

ぼくが『告白』を読んで思ったのは、作者の学校に対する嫌悪感である。そのような意図があるかどうかは不明なのだが、とにかく出て来るキーワードに対して嫌悪感しか抱かせない。いや、嫌悪というよりも、憎悪という方が近いのかもしれない。

ヤンキー先生金八先生、熱血な教師だけでなく、学校にクレームをする母親、賢い少年、バカな子供、少年犯罪、マスコミなど、ありとあらゆるものに牙を向ける。表現は柔らかくても、書いてることは何気に毒がある。

ぼくが惹かれたのは、実はストーリーでも文章でもなく、そこである。その思いが反映されたのか、だから最後の最後に犯人はすべてをぶち壊したいと思って、あんなことをしようとしたのではないだろうか。

全体の中で心温まる部分があるのは、ほんの数パーセント。そこがぼくのような人間には染みた。そういう意味で『告白』はおすすめ。あういぇ。