芥川龍之介はロックだ!
- 作者: 芥川龍之介
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/03/20
- メディア: 文庫
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すげぇ!芥川龍之介天才!やっぱりかっこよすぎる!最高!
もっと気持ち悪い話を書くというイメージがあって、それは『羅生門』なんだけど、やっぱり今読み返してもすごいよ『羅生門』は!
だって『羅生門』って、
あっちこっちに死体がゴロゴロ、カラスが死体をついばんだり、死体から着物をはぎ取ったり、得体の知れないババアが死体から髪の毛引っこ抜いたり
ホントにすごい世界観だよ!芥川龍之介の話ってビジュアルがホントにすさまじいんだけど、この『羅生門』もビジュアルありきというか、まず映像が先にあって、そこから人間のエゴとか本質を引っぱり出してる。『羅生門』のテーマはこれまたいろんなところでみられるような事で、
人間は生きるためならなんでもするという事。主人公はニキビ顔の青年で、ある日、ホームレスになって、んで、悪という概念が許せない人。だから盗人になるくらいなら餓死してやるって思ってるんだけど、羅生門の屋根の上で死体から髪の毛を引っこ抜いてるババアを見つけて、『なんでそんな事をしてるんだ!?』って訪ねたら、ババアが『いや、ヅラにしようと思って』と言って、それにショックを受けて、羅生門を去るっていう話だけど、人間って表面的には“殺人ってやーねー”とか“親からもらった命や体は大切にしよう”とかまっとうな事言うけど、実際“あの娘を犯したい”とか“あいつをぶっ殺してやりたい”って思ったりするわけでしょう。それが極限状態になると、モラルとかそんなの関係なくなるわけで、そこに人間の本心が見えるっていうね。実際、阪神大震災の時にレイプが多発したりしたらしいし、やっぱり略奪とかそういうの始まるからね、とにかくかっこいい小説だって事だよ。
んで、その後『鼻』を読む。これは人間というのは他人の不幸を笑い、他人の幸福を妬むという事がテーマ。無茶苦茶鼻がでかい男が陰でバカにされ、コンプレックスにしてるんだけど、ある日、その鼻を直したら、なおさらバカにされると、あの鼻が無くなったらお前はお前じゃなくなるだろうと、んで、鼻がまたでかくなって、これで誰からも笑われなくなるぞという話。Mr.Childrenも“コンプレックスさえもいわばモチベーション”って歌ってるけど、
ホントにコンプレックスっていうのはその人にとってはコンプレックスだけど、人によっては個性としてとらえてくれる場合があるんだね。深いなぁ。なんであれだけ短い小説なのに、ここまで深いんだろう。
11時から芥川龍之介の『芋粥』を読む。すげぇ!やっぱりかっこいい!あのね、言葉使いはメチャクチャかっこいいんだよ、それこそキレイな日本語で、比喩にもとんでて、「灰色の漣をよせる湖の水面が、磨くのを忘れた鏡のやうに、さむざむと開けてゐる」とかすげぇかっこいい。
んでね、そういう情景がぶわーっと浮かぶ一方で作品のテーマは誰にでも当てはまるような、共感出来るような事でしょ。この辺が芥川龍之介のすっげぇところっつーか、むちゃくちゃかっこいいところっつーかね。
『芋粥』は赤鼻でヒゲぼーぼーで着物もボロボロの男が芋粥に以上と言えるほどの執着があって、それを年に1回、喰うのが人生の喜びみたいに感じてて、1度ホントに飽きる程喰ってみたいと思ってる。実際に利仁っていう男がその男に芋粥を振る舞うんだけど、でも、もしね、それを飽きる程喰ってしまって、飽きてしまったら、オレは今度から何を楽しみに生きればいいんだ?と思ってしまって、ついには喰えなくなる。んで、腹一杯喰うチャンスがあったが、彼はこれからの生きる糧のために、芋粥を食わずに帰る。まぁ、だいたいがこういうあらすじなんだが、これ、酒じゃないってのがミソで、誰だってあるでしょう。オレとかも月餅とか大好きだけど、あれ丸々一個喰ったらもうしばらくは喰わなくていいみたいな。ココリコの黄金伝説でもやってたけど、マグロを一匹喰えば、マグロ嫌いになるみたいな。
『芋粥』は冒頭とか、あきらかに引き延ばしにかかってて、どうでもいいエピソードもあるけど、なんつってもすげぇのはラストだよ。
芋粥を飲まずにすむと云ふ安心と共に、満面の汗が次第に、鼻の先から、乾いてゆくのを感じた。晴れてはゐても、敦賀の朝は、身にしみるやうに、風が寒い。五位は慌てて、鼻をおさへると同時に銀の提に向つて大きな嚔をした。
大きなくしゃみは明らかに安堵感のメタファーでしょ。あれだけ冷や汗をかいて、それがちょっと乾きつつ、風に当たって、くしゃみをする。これが「芋粥を飲まずにすむと言う安心で男は笑った」だと、芋粥に飽きてしまうかもという危機感から脱した感じがない。あくびでも背伸びでもだめ。これがくしゃみっていうのがすげぇんだよなぁ。
つーわけで、グチャグチャな比喩よりも何か1つ分かりやすい言葉に例える能力の方がすごいと思った午後でありました。
あういぇ。