こころ

こころ (集英社文庫)

こころ (集英社文庫)

夏目漱石の『こころ』を読み出す。彼女と親父の2人に「最高だから読んだ方がいい」と言われたので、っていうか、ホントになんだろう。今さらビートルズの『イエスタデイ』って名曲だね!って、、、いや、違うな、今さらベートーベンは最高の音楽家だね!っていうようなもんだと思うが、

夏目漱石すげぇよ!

こう妙に斜に構えて、人生経験は少ないけども、知識だけ妙にある主人公が、海岸である男と出会い、その男に惹かれ、主人公はその男を“先生”と呼び、ついてまわり、家にまで上がり込む。“先生”は世間との関わりを絶って、何をするわけでもなく、奥さんと2人で淡々と暮らしている。理由は分からないが、主人公は“先生”にどんどん惹かれていき、妙な関係を築いていく、“先生”には謎が多く、山ほど伏線が張られるが、そのすべてはまったく明らかにされない。奥さんにも内緒で誰かの墓参りに行ったり、奥さん以外の人間を誰1人信じてなかったり、金の事になるといささか興奮気味に話したり、過去に何かある事は間違いないのだけれど、その過去の事は奥さんも知らないし、まったく話す様子もない。

そんなこんなで主人公のお父さんが肝臓の病気になり、いったん帰郷する事になるが、そこで“先生”から手紙を受け取る主人公。そこで“先生”の過去が明らかになっていく…

主人公と“先生”は本当に師弟関係があるわけでなく、友達同士と呼ぶような感じもなく、一定の距離がありながらも、お互いに居て悪い気はしないというか、主人公も“先生”の事を一方的に尊敬しているし、“先生”の事など何1つ分かってない。ここがこの物語のミソで、その前フリと伏線の張り方がバツグンにうまい。スタンド使いスタンド使い同士惹かれあうように、主人公と“先生”には何か惹かれ合うものがあった。その言葉に出来ない感じを見事に文章で表し、さらに謎を散りばめる事で、ちっとも飽きさせない。

光と影が生と死があるように、人間の中にも両極端なものがあり、感情はその表裏一体な物がグルグルと回転し続けたり、ごちゃごちゃに混ざっている。んで、その感情のどちらが自分にとって本性なんだろうと思ってしまう小説が『こころ』である。

誰かを純粋に愛する人がいる一方で、セックスにしかそういうのを見出せない人もいるし、ものすごく腹が減ってるときの自分と、腹がいっぱいで満足してる自分がいたりとか、優しい人って言われたとしても、ぶちぎれたりするわけでしょう。自分の友達に対して友達なのにもかかわらず嫉妬してしまったり、何かを分析してしまったりとか、そういう誰にでも当てはまる感情や心情が詰め込まれていて、共感せずにはいられない。『砂の器』じゃないけど、過去があったからこそ、今の自分がいるわけで、過去をいつまでも振り返っても居られない。でも人間は絶対に過去を振り返る生き物だったりして、過去や記憶が無くなったら、個人を形成するもんってのは何もなくなってしまったり…

あー!何が書きたいんか分からなくなって来たが、

夏目漱石の『こころ』という本はそういう複雑な要素がものすごくシンプルな文体でまとめあげられており、だから太宰治の『人間失格』同様に深く愛される小説なんだなぁと思う。

って言いながら、まだ全部読んでないけど(笑)あと、60ページくらいなんですよ、読んだ人なら分かるけど手紙のくだりでK出て来たよ。んで。今、Kと一緒に主人公が住んでるところだよ。