男が女にだけ見せる「優しさ」

人にやさしく 全4巻 DVD-BOX

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Mr.Children 1992-1995

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ぼくの職場に「女に優しい」というヤツが居た。もうずいぶん前に辞めたのだが、そいつの同僚の女からの評価はすこぶるよかった。

「優しい」
「ホントにいいヤツ」
「同い年くらいだったら付き合っても良い」
「紳士」

ところが、その男が見せる優しさってのは女に対してだけだった。男に対する態度は「これでもか!」というほど違い、男と女では彼に対する評価は著しく違っていた。

「チャラい」
「マジであいつはロクでもない」
「意味が分からない」

この事を同僚の女に暴露しても、ちっとも信じてもらえず、「そんな事は絶対にあり得ない」の一点張りだった。けっ、メス豚どもが。

じゃあ、女からの評価が良かった彼は職場でモテたかというと、そうではなかった。当時、十代で若過ぎるというのもあったと思うが、彼は優しすぎた。優し過ぎるが故に、「いい人」で止まってしまって居た。優しすぎても別に彼女が出来るというわけではないらしい、偏った意見かもしれないが、世の中というのは上手く回ってるものである。

さて、今度は、ぼくの職場のもう一人の男の話。

彼は先ほど紹介した男とは違って、職場では「冷たい」と思われている。しかも雰囲気が何故かチャラい。常に休憩室で黙々とジャンプを読み耽り、「話しかけるな」オーラを放ちながら、マクドナルドのハンバーガーを喰らっている。女の子に対して「かわいいね」と面と向かって言った事を聞いた事などなく、むしろよく見かけるのは、冗談半分に罵倒している姿だ。

そんな彼は非常に真面目で義理堅い男であった。まず、彼は自分が受けた恩は必ず返す男で、それはまるで、その恩を受けたまま死ぬと末代まで呪い殺されるくらいの勢いだ。そして、彼は男と女関係なく、ここぞという時に底抜けに優しかった。ぼくでさえも彼に救われた事があったくらいである。

そんな彼は職場でやたらモテていた。しかも年上のいわゆるお姉様方からの評価が圧倒的である。

「○○くん萌え」
「あの子好きよ」
「ああいうのがタイプ」

これも偏った意見なわけだが、意外と見てる人は見てるようである。世の中というのはやっぱり上手く回っているもんだ。


最近、女にだけ優しく接しようとする男がホントに気持ち悪く見える。自分にもそういうところがあるので、ホントにホントに気をつけなければならない。「優しい」という言葉を辞書で引くと「他人に対して思いやりがあり、情がこまやかである」と出て来るので、「女に対してだけ見せる男の優しさ」はハッキリ言えば優しさじゃないのだ。それに気づいてしまって、なんか自分の行為も含めて気持ち悪さを感じるのだ。

そもそも男が女にだけ優しさを見せる時とはどういう時だろう?やっぱり、「その娘に良く見られたい」という感情とか、自分のなかで「この娘がなんとなく気になってる」とか、そういうのが一番に働くんじゃないだろうか?もう突き詰めてしまえば、「この娘とセックスしたい」なんて事も深層心理で働いているのかもしれない。動物として、オスとして、それを思うのは悪くはないのだが、それは他人に対する思いやりとは違うもんになっている。

男というのは情けない事に、自分に彼女が居たとして、二人で歩いていても、タイプの女の子が前方から歩いてくれば、ついついチラっと見てしまうような浮ついた気持ちにまみれた生き物である。そしてミスチルが歌ったように、それもまた一つの愛なのだ。

ぼくはレディーファーストが出来ないとよく女の子に怒られるが、そもそもレディーファーストという概念自体が好きじゃない。何故女にだけ優しくしなければならないのか?ぼくは女だから優しくするという事はないので、それが人としてのマナーであるならば、男に対しても車のドアを開けたりしなくてはならなくなる。そんなのめんどくさいので女にもしない。まぁこんな事をつらつら書いてる時点で、レディーファーストをしてると誰が想像するだろうか。

もちろん、世の中にはいろんなタイプの人間が居るので、狂気にも似た親切心を持つ男も居るだろう。浮ついた気持ちなどなく女の子に優しくする人も当然居るはずだ。ただ、やっぱり、男ってのは女からはちょっと冷たいくらいに思われた方がいいのではないか?「私、優しい男がタイプなのぉ、クラスで言えば○○くんみたいなぁ」つって、「あいつは女にだけ優しいクソ野郎だ」なんて言われるような男はあんまし信用しない方がいい。とむしろ、男から「あいつは優しい男だ」と言われる奴の方がぼくはよっぽど信用出来るのだが、これはぼくだけなのだろうか?