Blurの『blur』

最近ゴリラズを聞いていたので、久しぶりにブラーを聞き返していた。

Blurの『blur』というアルバムが無茶苦茶好きだ。個人的には90年代を代表するアルバムの1つである。

ブラー

ブラー

当時グランジ/オルタナの呪縛から抜け出すためにイギリスの音楽シーンは1つのムーブメントを作る。それがブリットポップである。そこの渦に飲み込まれたバンドがOasisBlurという2つのバンドだ。Oasisは上質なロックンロールを作り、Blurは良質なポップソングを作っていた。だから個人的にはこの2つのバンドが合体したら、ホントにビートルズに匹敵するバンドになり得ると思っていた。だが、知っての通り、この2つのバンドはマスコミの煽りもあり、音楽的にも人間的にも敵対し、最大のライバルとして発言や発売日など、イギリス中の注目を集めるようになる。


ぼくはブリットポップという言葉にまったく興味がなかった。BlurOasisRadioheadも音楽的にはバラバラでそれぞれがそれぞれの音楽を展開していたから、一括りにするような感じとは思わなかったからだ。ブリットポップという言葉が1人歩きし始めた中、Blurのフロントマンであるデーモン・アルバーンはインタビューで「ブリットポップは死んだ」と発言し、セルフタイトルの『blur』を発売、その後Radioheadが『OK Computer』を発表。この2枚のアルバムが出た事でブリットポップのムーブメントは終わったとされている。


自らが作り上げた(マスコミが煽ったとはいえ)ブリットポップを自ら終わらせたBlurの『blur』だが、今でも金字塔と言われるのはRadioheadの『OK Computer』であり、それこそ『OK Computer』は90年代最高の1枚と呼ばれるが、個人的には『blur』も同じくらいの威力を持ったアルバムだと思っている。確かに『OK Computer』に比べればまとまりもないし、遊びすぎてる楽曲も目立つが、ぼくがなによりも素晴らしいと思ったのは、グランジ/オルタナの呪縛から抜け出すはずのBlurグランジの影響を受けてブリットポップを終わらせた事なのだ。


このサウンドの変化に、それまでのBlurファンは100%戸惑ったに違いない。ここで展開されている音は今までのBlurとはまったく違うものであり、ダウナーで取っ付きにくく、ポップソングと呼ばれる物は1つもないからだ。『blue』というアルバムは今まで目立たなかったギター音が全面に押し出され、ゴリゴリのロックを披露したと思えば、グランジもパンクもフォークロックもサイケも取り込み、アメリカという国が作り出した音楽を達観してるかのような境地に達している。


それまでのBlurを聞き込んでる人にはこのアルバムはショックだったはずなのだが『blur』はブリットポップを終わらせてしまうというのも納得するほど強力なアルバムだ。このサウンドの劇的な変化、そして、その変化がガッカリする様なものではなく、今までのBlurのアルバムが聴けなくなってしまうくらいのかっこ良さに満ち溢れている。ビートルズが『Rubber Soul』を作ったのと同じだとよく評価されるが、個人的なインパクトはそれよりもでかい(リアルタイムだったし)。


それまでのポップソングから逸脱した先行シングルの『Beetlebum』。NirvanaWeezerと足したようなグランジの『Song2』。けだるいベースとアコギの音が抜群の『Country Sad Ballad Man』。イントロからグレアムのギターフレーズが炸裂し、サビで爆発するグランジの『M.O.R』。こちらもグレアムのギターが完璧な『On Your Own』。それまでのBlueをもっとイカレさせたようなインスト曲の『Theme from Retro』。個人的にはジョンレノンの『悲しみをぶっとばせ』を連想させる『You're So Great』。後のGollirazを連想させる『Death of a Party』。アメリカやイギリスなど国を歌ってる歌が多い中で中国の事を歌った『Chinese Bombs』は個人的にこのアルバムでベストソング。またまたGollirazを連想させるような『I'm Just a Killer for Your Love』を越え、とてつもない名曲の『Look Inside America』はアメリカと言う国を皮肉屋のイギリス人が客観的に、そして的確に歌詞にしていて素晴らしい。個人的には『End Of A Century』に並ぶ名曲だと思う。そしてまたBlur風のフォークロックな『Strange News from Another Star』さらにグランジ風のギターフレーズが最高な『Movin' On』ひねた曲をたくさん披露して来た中でラストに来るのが、今まで以上にひねた『Essex Dogs』というのもおもしろい。


個々の楽曲の完成度が高いとは言えないし、それこそメロディがよく分からない物もあるが、この音像や雰囲気も含め聴き続けられるアルバムである事は間違いない。『blur』は確かに1本筋が通ってない印象もあるし、15曲もあるから、もっと収録曲を絞ってシャープに仕上げた方がよかったのでは?とも思う。ハッキリ言って雰囲気だけの捨て曲もなくはない。だが、過去の自分たちへの決別宣言とも言える名曲とこれからの自分たちの音楽に向けた佳曲(Gollirazにはこのアルバムに似た雰囲気がある)がいいバランスで入っていて、アルバム1枚のコンセプトとしては申し分無い。ブリットポップという現象と向き合い、アメリカの音楽の影響を素直に受け、結果、ブリットポップを終わらせてしまった『blur』はやはり90年代を代表する1枚と言っても過言ではないだろう。