「およげたいやきくん」の元ネタ?『マスウェル・ヒルビリーズ』

最近キンクスの『マスウェル・ヒルビリーズ』をよく聴いてました。

キンクスといえば、イギリス4大バンドのひとつという言い方をされてますが、日本だとビートルズストーンズザ・フーよりも一般的な知名度はないんじゃないでしょうか。レンタルショップでもキンクスだけはベスト盤しか置いてないイメージがあります。実際ぼくも探しまわってファーストアルバムをレンタルしたくらいですし、ビートルズストーンズ、フーを聴くという人はぼくの周りにも数名いますが、キンクスを聴くという人に出会ったことがありません。

このアルバムは労働者階級のイギリス人がアメリカに対する憧れを描いていると言われています――――と言いながらも、和訳された歌詞カードが手元にないので歌詞についてまったく言及出来ません。なんてこったい。ただ、内容を紹介しているサイトによれば、人間関係や仕事に疲れて酒に溺れる男の歌や会社をクビになった男がそれを休日として過ごす歌など、日本でいうところの「山谷ブルース」的な世界観があるようです。ぼくがこのアルバムを知ったのは「ROCK名盤入門」的な本で紹介されていたからであり、それに載ってるアルバムを片っ端から聴いていたので、それで引っかかったというだけのことであります。なので、キンクス自体に詳しいというわけではありません、ご了承くださいませ。

ジャケットがイギリスのパブを写したものになってますが、それが象徴するようにサウンドも酒を飲みながら聴くのにちょうどいい緩さがあるように思います。ブギー調やホンキートンクピアノ、スライドギターによるブルース、カントリーなど、鋭角でモッズなロックンロールをしていたバンドとは思えないほど音に幅があって、何回聴いても飽きません。

さて、ここからが本題です。このアルバムに“Holloway Jail”という曲が収録されてるんですが、この曲、聴いた瞬間に日本を代表するヒット曲に似ているなと思いました。

最初はアコースティックギターから入るのですが、30秒過ぎたあたりでエレキギターがかぶさるんですよ。ここがその日本を代表するヒット曲のイントロにそっくりなんです。

どうですか??似てませんか??テンポも、いえばサビのメロと30秒すぎたあたりのメロも少しばかり似ている気がします。

しかもおもしろいことにキンクスの『マスウェル・ヒルビリーズ』は労働者階級が仕事から逃げたいという世界観で、これも「およげたいやきくん」の歌詞と一致するわけですよ。残念ながら“Holloway Jail”は「恋人が悪い男にそそのかされて刑務所に入っちまった!」という歌で、それそのものがかぶってるわけではないのですが、いずれにせよ偶然にしては出来過ぎています。しかも『マスウェル・ヒルビリーズ』の発売は71年であり、「およげたいやきくん」の発売が75年ですから、アルバムを聴いて、この曲を着想し、そこから制作/発売までの時間軸もあってる気がします。

実はキンクスの曲に似ている日本の歌謡曲*1はもう一曲あります。それが郷ひろみの「花とみつばち」です。このイントロのリフがキンクスの“All Day And All Of The Night”に似ているのです。

しかもこうやって改めて聞くと、郷ひろみの「花とみつばち」はかなりロックテイストであることが分かります。「花とみつばち」の発売は74年で、作曲は筒美京平先生。これも無い話ではありません。なぜこれが分かったかというと、この曲のリフをたまたま口ずさんでいたら、妹に「去年のFNS歌謡祭でも見たの?」と言われたんですよ。なんのことかちんぷんかんぷんじゃないですか。そしたらば、去年のFNS歌謡祭で郷ひろみAKB48と共に「花とみつばち」をパフォーマンスしていて、そのリフを妹がたまたま覚えていたということなんですな。それで妹はぼくが「花とみつばち」を口ずさんでると勘違いしたわけです。確かに比較するととても似ています。

というわけで、日本での知名度があまりないわりに、日本でのヒット曲にとても似ているキンクス。そう言った意味では実は日本人に一番耳馴染みがいいのがキンクスなのかもしれません。もしこれで興味を持った方はベスト盤をレンタルショップで手に取ってみてはいかがでしょうか?あういぇ。

マスウェル・ヒルビリーズ<デラックス・エディション>(紙ジャケット仕様)

マスウェル・ヒルビリーズ<デラックス・エディション>(紙ジャケット仕様)

あ、ちなみにキンクスの「ホリデイ」という曲とビートルズの「ハニーパイ」も似てるんですよ。それはまた別の話になるのかな……

*1:たいやきくんは歌謡曲じゃないのかな??