レンタルズなのにレンタルはない「セブン・モア・ミニッツ」

少し遅れましたが、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

てなわけでザ・レンタルズの「セブン・モア・ミニッツ」を聴いた。

Seven More Minutes

Seven More Minutes

レンタルズはウィーザーのベーシストであったマット・シャープのバンド。当初はウィーザーとかけもちをしていたのだが、レンタルズに専念したかったのか、クビになったのか、マットはウィーザーを脱退する。その脱退後に豪華ゲストを迎えて放たれたセカンドアルバムが「セブン・モア・ミニッツ」である。

レンタルズのファーストは「名盤」という人もいるし、90年代パワーポップを代表するアルバムだという人もいるが、ぼく的にはそこまでインパクトはなく、「グリーン・アルバム」のポップ感にチープなシンセとコーラスを加えたバンドという印象しかなかった。ニューウェーブっぽいというのもレビューで多く見かけたが確かにその通りで、ポップではあるんだけど、どこかダウナーであり、まぁこれだったらウィーザー聴くかなという感じで、そのままスルーしていたのだった。

時は流れ、年末にツイッターウィーザーの話になり、あ、そういやぁレンタルズってアジカンにカバーされたりしてたなぁ、聴いてないやつ買ってみようとマケプレで買ったのが「セブン・モア・ミニッツ」であった。ファーストのジャケットはダサいけど、このアルバムはジャケットもかっこいいし、何よりも値段が一円だったから速攻で1-Clickした。

んで、ホントにファーストのこともあったし、なんの期待もせずに聴いたら、これがぶったまげた。レンタルズはわずか二枚のアルバムでウィーザーと肩を並べるパワーポップバンドになっていたのである。

ダウナーでもたついていた曲が多いという印象があったが「セブン・モア・ミニッツ」は曲が多彩だ。グリーン・デイの「ウォーニング」のような弾けるポップ感に、ニルヴァーナスマパンのような音像をもった重々しいナンバー、さらにウィーザーが「マラドロワ」で見せたバカっぽい小品テイストもほどよくブレンドされ、ブラーの「ブラー」のようなひねたグランジ感もあり、デーモン・アルバーンがゲストとして参加しているのも頷ける。

ただ「加えただけ」感が強かったシンセと女性コーラスは神秘的であり、バンドの「音」として大きく鳴りはじめ、歌モノとしてもメロは際立っている。元々同じバンドで活躍していたマット・シャープなわけだが、ハッキリいってウィーザーでやっても違和感ない曲も多く、とてつもない才能がウィーザーの中に眠っていたんだなと思わされた。歌詞も「ピンカートン」のような情けない男の独白ばかりで、リヴァースがポールならマットはレノンというくらい感性は似ている。うーん、なぜ脱退してしまったのだろうか。

何よりもこのアルバムがすごいのは「あまり有名ではない」ということだ。youtubeの再生回数は当然ニルヴァーナグリーン・デイウィーザーに比べると遥かに低いし、レビュー数がひとつくらいしかないのもそうだが、マケプレで1円で投げ売りされてるというあたり、買ってから売る人がとてつもなく多かったのだろうか。中にはハードオフで250円くらいで売ってますなんてのも見かけたし、レンタルズでググるとぼくがツイッターでつぶやいたつぶやきが何個がトップにあがってくるので、ホントに日本でも聴いてる人はごくわずかなんだろう。

確かに世間的な評価は低いかもしれないが、ぼくはこのアルバムが大好きである。確かにボーカルはヘタウマと言えるレベルだし、あいかわらずドラムはドタドタしているし、シンセはやっぱりチープで、ザ・フーの「ババオライリー」並みにへんちくりんと感じるかもしれないが、それらのどうしようもない部分が見事に味となってレンタルズの音楽性を唯一無二のものにしている。特に夜ヘッドホンで聴くと圧倒的な気持ち良さだ。ウィーザーの「グリーン・アルバム」や「マラドロワ」はおろか「ブルー・アルバム」や「ピンカートン」とくらべても遜色ないできだといえる。

というわけで、いきなり年始からなんなのよという感じだが、もし聴く音楽などなかったらおすすめです。今なら輸入盤がマケプレで1円で買えます。あういぇ。

Return of the Rentals

Return of the Rentals

レンタルズ・トリビュート「LOST OUT IN THE MACHINERY ~THE SONGS OF THE RENTALS~」

レンタルズ・トリビュート「LOST OUT IN THE MACHINERY ~THE SONGS OF THE RENTALS~」

なぜかアルバム2枚しか出してないのにトリビュート盤も出てる。不思議だ、不思議でならない。